〈クローズアップ〉北九州支教区「特別青年幹部教育」 共に寄り添う力育む 法座を実践形式で演習
立正佼成会の教団創立100年に向けた教会幹部の育成を目指し、北九州支教区は今年4月から7月、「特別青年幹部教育」と題した独自の教育課程を実施した(全3回)。青年幹部が法座の実践演習を通じて、他者が抱える苦悩に耳を傾け、共に考える中で寄り添っていく力を養うもの。福岡教会を会場に行われ、9教会から20人が参加した。
これまで同支教区では、時代とともに変化する人々のニーズに応え、他者に寄り添い、共に成長できる青年菩薩を育てるための教育課程を検討してきた。昨年からは、各教会の教会長や青年教務員の発案で「青年幹部教育」を開催し、佼成会の救いの中心である法座に焦点を当て、相手の立場に立って悩みに耳を傾け、安らぎと希望を与える力を養う研修を行ってきた。
今回の特別教育はそれらの成果を基に、さらに思いやりの心を広げ、実践的な課題に取り組めるようになることが目的。参加対象は、昨年の教育を受講し、より学びを深めたいと願う青年幹部に限定した。
特別教育のポイントは、毎回行われる「法座主演習」。参加者は2班に分かれて法座を行い、法座主と証明役(進行役)を交代で担いながら、ほかの参加者の悩みに向き合った。
演習で特に重視されたのは、苦悩の解決のような結びを急ぐのではなく、法座主が相談者の悩みに寄り添いながら、事柄の奥に隠れた心の痛みを聞き切り、本人が自分の力でその痛みを表せるように、法座主自身も“自分の言葉”で丁寧に伝える姿勢だ。例えば、根本義の「縁起観」に照らし合わせながら、相談者と共にどのような「因」と「縁」が出合い、果(問題)が起きたのかを探り、苦の原因が自分の中にあることを相談者がつかんでいけるよう、法座主自身の言葉で讃(たた)えながら表現する。参加者はこうした点を意識し、目の前の苦悩にしっかり寄り添える自分になりたいと願い、真剣に取り組んだ。
毎回、演習後には研さんの時間が設けられた。参加者は法座の難しさを吐露するとともに、「相手に言って聞かせようとしていた」「結びに気を取られ、相手の心の痛みをくみ取れなかった」などの反省点を語り合った。また、研さんでは、久井快哲佐世保教会長をはじめ講師陣が法座主としての伝え方や話を聞く際の表情をアドバイス。参加者は反省点を次に生かせるよう繰り返し演習に臨んだ。
相手に合わせて話を聞き切る
全3回の教育を終えた参加者は皆、それまで抱いていた法座のイメージが変わったという。長崎教会青年部長(39)は、「法座は『悩みを解決する場』と思っていましたが、今回の教育で、悩みの中にある相手の思いを感じる瞬間を味わうことこそが結びにつながると教わりました。実際の法座でも、解決しようと気負い過ぎず、目の前の人の心境を感じ取る力が身につきました」と話す。
手どりなどの教会活動で学びを生かし、サンガ(教えの仲間)との関わりが変化したと語るのは佐賀教会少年部長(50)。「相談に乗る時、以前はアドバイスだけしていましたが、研修後は話の枝葉にも注目し、悩みに関係しそうな事柄を見つけて尋ねるように意識しました。すると、相手も自身の感情を深く考えて話してくれるようになり、考える機会をつくる大切さを実感しました」と感想を述べた。
教育の成果を職場で実践する幼稚園教諭の佐世保教会少年副部長(52)は、以前は園児について気になることがあっても、聞いたら失礼だろうと思い、保護者にうまく質問できず悩んでいた。「自分が“どういうことだろう”と感じた引っかかりを素直にお尋ねすればよいと分かり、心が楽になりました。保護者に対して真摯(しんし)に接せられるようになると、向こうから相談してもらえる機会も増え、距離感が縮まった気がします」と喜びを語る。
参加者は特別教育を通して、「相手に合わせる」「話を聞き切る」といった法座主演習に取り組む中で、自分自身の内面を見つめ直した。今、それぞれが青年部活動の中で、さらには家庭や社会生活など、人と関わる全ての場面で学びを生かし、生き生きと人との触れ合いを続けている。