ウクライナ避難民の現状を視察 水藻克年・本会ローマセンター長に聞く

スロバキアのコシツェではフォコラーレ運動が支援するカトリック教区の施設を訪問。避難民の受け入れ状況について話を聞いた(写真は、調査団提供)

ロシアの軍事侵攻で国外に逃れたウクライナ避難民の現状を視察するため、立正佼成会は5月4日から21日まで調査団を派遣した。同団に参加した水藻克年ローマセンター長に、視察の様子や避難民の状況について聞いた。

「家族になる」「抱きしめる」との思いを大切に相手に寄り添う宗教者の姿が

私が赴任するローマからウクライナの首都キーウまでは約1600キロ、東京から沖縄に近い距離です。そんな身近なところで、しかも国連の常任理事国で核兵器を保有するロシアが軍事侵攻したことに、本当に驚きました。ヨーロッパの会員さんからは、法座で、「この争いがヨーロッパ全土に広がるのではないか」「息子が軍隊の予備役に登録していて戦地に行くかもしれない」といった不安な思いが打ち明けられました。会員さんの中には、軍事侵攻が始まった当初から、看護師として赤十字を通してオデーサに入り、今も戦闘が激しい地域でボランティアに従事している人もいます。そうした話を聞かせて頂く中で、同じヨーロッパに暮らす信仰者として私も何か行動を起こさなければと思っていました。

水藻ローマセンター長

こうした思いの中、調査団ではモルドバ、ポーランド、スロバキア、ルーマニア、ハンガリー、イタリアを訪れ、ウクライナから逃れてきた人々と、避難民を受け入れている方々から現状を聞かせて頂きました。

この中で感じたことは、今回の避難民と一般的な“難民”とでは、性質が全く異なっているということです。通常、内戦や紛争で生まれる難民は、家族単位で避難していることがほとんどです。しかし、ウクライナの方々は、政府が徴兵の可能性がある男性の出国を禁じているため、ほとんどの家族が一家の大黒柱を国内に残したまま、女性と子供だけでの避難を余儀なくされています。しかも、父親や夫と毎日SNSなどで連絡を取り合っているため、物理的にはウクライナから離れているものの、心理的には戦地に残っている状態なのです。

この特殊な状況に加え、避難した国では言葉が通じないため、子供を学校に通わせられず、仕事もありません。父親や夫が避難先に来るのを待って第三国で新たに生活することを考えている方は、ほとんどいないのです。戦闘の終結が見えない現状を考えると、今後は国内避難民という形で、比較的安全とされているウクライナ西部に戻る人が増えてくるのではないかと感じています。

一方、避難民の受け入れに当たっている団体を視察する中で印象深かったのは、民間の団体は主に寝る場所や食事の提供といった物理的な支援を重視しているのに対し、宗教者はそうした支援以上に「家族になる」「抱きしめる」といった思いを大切にしながら相手に寄り添っていたことです。特に各国でお会いした神父さんが皆、口をそろえて、支援する相手ばかりを見るのではなく、「愛を持って接しているか」「相手にとって自分は良い人間であるか」と常に内省しながら触れ合うことが大切とおっしゃっていたのには、とても感銘を受けました。宗教者が支援する施設では、避難してきた人々の元気な姿や安らぎを感じている様子を目にすることができ、苦しい状況の中にも希望を見いだされているように感じました。

軍事侵攻が始まって3カ月以上が経ち、戦闘が長期化している現状を考えると、今はまだあまり表面に出てきていない精神的な問題に対するケアが今後は特に重要になります。そして、そこには必ず、信仰に基づいた触れ合いが大切になると思います。ある神父さんから、「仏教の平和観や価値観を伝えることは避難民にとってすごく大きな力になるし、喜ばれるだろう」と言って頂き、大きな勇気を頂きました。

2週間以上にわたる視察では、避難民の現状を知り、仏教教団である立正佼成会ならではの支援の在り方を模索する機会となっただけではなく、サンガの皆さんの思いが込められた千羽鶴を手渡すこともできました。避難民への直接的な支援方法は限られているかもしれませんが、祈りは物理的な距離を超え、ウクライナの人々に届いています。これからも皆さんと共に、日々のご供養で一日も早く戦闘が終結し、ウクライナの人々に幸せが訪れることを祈りながら、世界平和の根本である家庭や身近なところで菩薩行に励んでいきたいと思います。