立花産業株式会社・小林孝利社長に聞く 社会貢献活動に取り組む個人や団体への支援事業を展開

立花産業株式会社の小林社長

立花産業株式会社は昨年5月から、全国の営業所や出張所の包括地域内で、社会貢献活動に取り組む個人や団体への支援事業を展開している。同社社員が地域社会の課題に目を向けるとともに、支援を通じて地域とのつながりを強め、企業の社会的責任を果たすことが目的だ。昨年、本社に申請された活動は29件。介護や障害者福祉、生活困窮者支援、青少年育成など多岐にわたる活動が受理された。今回の事業について、小林孝利社長に聞いた。

包括地域内で活動する人々とのつながりを強化

すべての人の物心両面の救われに寄与する――そうした庭野日敬開祖の願いのもと、1964年、立正佼成会の事業体として当社が設立されました。現在、保険事業を中心に、仏具や什器(じゅうき)などを販売する商事事業、建設や設備管理などを担う施設管理事業を行っています。

また、これまでにもさまざまな社会貢献事業に尽力してきました。91年から公益財団法人庭野平和財団への寄付を始めて、2014年2月には、創立50周年記念事業としてスリランカに「たちばな諸宗教幼稚園」を開設しました。昨年からは、日頃からお世話になっている「地元」に目を向けた取り組みを始めました。

これは、地域に根差して社会課題に取り組むNPOやNGOと社員一人ひとりがつながり、物資の提供による支援を通じて、地域密着型の社会貢献を進める活動です。昨年申請された29件の中で特に多かったのは、「子ども食堂」への支援でした。

この中で、甲信営業所(山梨・甲府市)は、NPO法人にじいろのわを支援先に選びました。甲府市総合市民会館で子ども食堂を運営している団体です。会員さんを介してこの団体を知った所員が、実際に子ども食堂に参加する中で、多くの大学生ボランティアが運営を支えていることに目を留めました。そして、団体のスタッフと話し合い、ボランティア用のそろいのTシャツ100枚の贈呈を決めたのです。子ども食堂の運営スタッフからは、「着ると気合が入る」「子供たちがスタッフを識別しやすくなった」といった感想を頂いています。

同営業所の所長(56)は、食堂を利用する子供が、「大きくなったら、お兄さんやお姉さんたちのようにあのTシャツを着て、小さい子のお世話をしたいんだ」と話してくれたことが忘れられないと言います。「この支援によって、〈人の力になれるような大人に〉という思いが、子供たちの心に芽吹くきっかけになれたことが何よりの功徳です」と報告してくれました。

また、この社会貢献事業を通じ、「人としての成長を実感しています」と報告してくれたのは、関東北営業所(宇都宮市)の男性社員(37)です。彼は、栃木県内で重度心身障害者の入所施設や介護福祉施設を展開する社会福祉法人に、UV空気殺菌機の贈呈を企画しました。発案のきっかけは、ある女性との出会いだったそうです。男性社員は、お客さまであるその女性から多くを学んだと言います。保険の更新手続きなどで訪ねると、いつも男性社員の好みの茶菓子などを用意して待ってくれていたそうです。男性社員は、常に目の前の人の喜びを考え、利他行に徹する女性から、「自分が損得勘定で物事を考えがちだったことを省みました。彼女を手本に、仕事では『どうしたらお客さまに喜んでもらえるか』を第一に考えるようになり、今は、『お客さまの期待以上のことをして、驚かせたい』という思いが仕事へのモチベーションになっています」と話してくれました。

こうしたご縁から、コロナ禍の中で、重症化リスクの高い利用者向けの感染対策を徹底する一方、予算の都合上、職員向けの対応が手薄になっている施設があると聞き、今回の支援に踏み切ったそうです。

この他にも、フードバンクへの食料提供や生活困窮家庭の子供たちの学習支援、ホームレス支援といったさまざまな活動を、社員を通じてサポートしています。

関東北営業所は、鹿沼市社会福祉協議会(栃木県)を通じ、フードバンクや児童養護施設への支援を行った(同営業所提供)

社員それぞれが起案し、本社経営戦略室に申請するのですが、企画には、一人ひとりが地域社会を知り、活動している人とつながるとともに、現場のニーズをくみ取らなければなりません。社員からは、それらの過程の中で、「一歩踏み出す積極性を学んだ」「これまで出会うことのない人とつながることができた」との声が寄せられています。

再来年、当社は創立60周年を迎えます。お客さまのニーズに応え、信頼関係を築き、新たなつながりを育む――そのために、社員一人ひとりが自ら考え、そして行動することで、地域に愛される私たちになれるよう、精進してまいります。