「発達障害啓発週間」特集 誤解や偏見をなくし、共に生きる社会へ(1)

育て方や性格は関係なし 正しい知識を持って理解することから

――発達障害とはどのようなものですか

その説明をする前に、この「障害」という名称が、誤解と偏見を生んでいます。例えば、年齢相応の成長度合いを100点とする知能検査を行ったとします。一般の人は、言語の表現能力や理解能力、社会性、基本的生活習慣など、全ての項目でほぼ100点に近い、バランスの取れた結果がでます。

各種発達障害の発達プロフィール(クリックで拡大)
©著書『発達障害に気づかない大人たち』から

これに対し、発達障害の人は、ある能力が150点と飛び抜けた点数を取る一方で、別の能力では50点しか取れないという、脳の発達に凸凹が表れます。これを私は、「発達アンバランス症候群」と呼んでいます。ただ、ここでは「発達障害」という言葉を使って説明します。

発達障害はこれまで、知能に遅れがあり、学業についていけず、問題行動を起こす子供を指すのが一般的な理解でした。しかし、発達障害のある子供の中には、テストの成績が優秀な子が少なくありません。そのため、たとえコミュニケーション能力に問題を抱えていても、「ちょっと変わった子」と見られ、障害があるとは思われないのです。

その特徴の原因が個人の特性や性格によるものなのか、それとも障害による症状なのか分かりにくいため、発達障害のある人は周囲から「怠け者」「変わり者」「自分勝手なわがままな人」と誤解されることが多々あります。本質的な原因は脳機能の発達の偏りによるもので、家庭環境や本人の性格などとは関係ないこと、その点を理解してください。

――大人の発達障害にはどんな特徴がありますか

発達障害は大きく分けて、知的障害を伴う重度のものと、軽度のものがあります。軽度の発達障害の中にも、社会性や人とのコミュニケーションスキルが乏しい自閉症スペクトラム障害(ASD)、アスペルガー症候群(AS)、学習能力の習得に困難が伴う学習障害(LD)などさまざまです。

大人の発達障害といわれるものの中で、最も多いのは、注意欠陥・多動性障害(ADHD)です。これには大きく分けて、「ジャイアン型」と「のび太型」があります。

「ジャイアン型」は、幼児期から学童期前半にかけて、「落ち着きがない」「キレやすい」などの症状が表れます。この傾向は、成長するにつれて徐々に改善され、目立たなくなっていきます。しかし、大人になるとせっかちで気ぜわしくなり、転職や引っ越しを繰り返したり、交際相手を頻繁に変えたりといった行動が多くなります。

一方、「のび太型」は「注意力に欠ける」「忘れ物が多い」「整理整頓ができない」「感情が不安定で落ち込みやすい」といった特徴が表れます。「ジャイアン型」と違い、目立った問題行動ではないために気づかれにくいとされています。大人になって社会で働くようになると、打ち合わせの時間を守れず、連絡や書類作成でミスを繰り返すなどの失敗が続き、さらに、上司に何度も指摘されることで落ち込みます。

発達障害と知らずに大人になると、社会で生きづらさを感じ、うつ病や不安症、睡眠障害、アルコールやギャンブルなどの依存症といった二次障害や合併症を引き起こす傾向が強くなります。

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