地域の非営利団体に協力する「一食地域貢献プロジェクト」(3) 「日本盲導犬協会」(横浜教会が支援)

胴輪(ハーネス)を着けた訓練犬が、訓練士の左横を並行している。訓練士の左手にはハーネスから伸びる1本の金属棒が握られ、棒の動きで障害物の存在が伝わる。歩道橋の階段に差し掛かると、犬が前足を一段目に乗せて止まった。訓練犬は〈この先に上り階段があるよ〉と伝えたのだ。「グッド!(よくできたね)」。訓練士の声に、訓練犬はうれしそうに尻尾を振った。

国内には、11の盲導犬育成機関があり、その一つが、1967年設立の「日本盲導犬協会」だ。横浜市にある神奈川訓練センターをはじめ全国4カ所に訓練拠点を有し、多数の盲導犬を育ててきた。

目の不自由な人の歩行をサポート

同協会普及推進部リーダーの松尾篤さんは、「盲導犬は、ユーザー(視覚障害者)との信頼関係があることで“目”の役割を果たします。訓練士は、犬に優しく声を掛け、褒めながら訓練します」と語る。

協会ではユーザーに盲導犬を無償貸与し、盲導犬との歩行指導も行う。盲導犬や障害者に対する理解を深める目的で、学校や商業施設に出向き、盲導犬の活動を紹介するPR犬との歩行実演、ユーザーによる講演も展開している。

協会の盲導犬と生活する60代の女性は、「白杖(はくじょう)を使い、路上の変化に緊張して歩いていたのが、犬のおかげで季節の移ろいや草木の匂いを感じる余裕ができた」と話す。

訓練犬はさまざまなトレーニングを始める前に、いろいろな人に慣れさせるため、生後2~3カ月からの約10カ月間、一般家庭に預けられる。愛情を持って育てられるが、犬にもそれぞれに個性があり、訓練が終わって盲導犬に向いていると判断されるのは、10頭のうち3~4頭だ。

現在、盲導犬との生活を希望する視覚障害者は約3000人に上り、一日でも早く盲導犬を提供したいと松尾さんは話す。一方、盲導犬の公共施設などへの同伴を拒否される事例が多いことが課題という。協会では、盲導犬育成技術の向上や協力団体とのさらなる連携、広報活動の拡充で現状を改善したいとしている。

松尾さんは、「目の見えない人、見えにくい人のお役に立ちたいと活動することで、人や犬など全てのいのちが尊重される社会の実現に貢献したいと願っています」と語った。

◆ ◆ ◆

この企画では、立正佼成会「一食(いちじき)地域貢献プロジェクト」が支援する団体の活動を紹介する。

メモ:一食地域貢献プロジェクト

「一食を捧げる運動」の浄財の一部を全国各教会が主体的に活用し、地元のニーズに応えて活動する非営利団体の支援を通して、温かな地域づくりに協力している。なお、「一食を捧げる運動」とは、月に数回食事を抜く、あるいはコーヒーなどの嗜好(しこう)品を控えて、その食費分を献金して国内外の諸課題に役立てる取り組み。
http://www.ichijiki.org