WCRP日本委とJAR 5年目を迎えた「シリア難民留学生受け入れ事業」 24人が来日し、定住に向け支援進む

パスウェイズ・ジャパン代表理事 折居徳正さん

折居氏

シリア難民留学生受け入れ事業の開始当初から、難民支援協会(JAR)のスタッフとして、留学生の支援に携わってきました。

イスラームを信仰するシリア人の留学生たちが、世俗化された日本社会でムスリム(イスラーム教徒)として生きていくには、さまざまな面で難しさがあります。知り合いもいない日本で孤立しがちな彼らを支え、葛藤や戸惑い、不安といった“心の面”に寄り添うことができるのは、宗教者の方々です。今改めて、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)の協力なしに、この事業を行うことは難しかったと感じています。

候補者の面接で印象的なのは、シリア人の若者の多くがアニメを通じて日本に親近感を抱き、日本人の勤勉さやチームワークの良さなどに好感を持っていることです。また、第二次世界大戦の敗戦と荒廃から復興した日本の経験を学び、これからのシリアの復興に生かしたいという思いもよく耳にします。ただ、日本に対してあまりにも良い印象を抱き過ぎているところもあるので、面接では「難民というだけで、ネット上でバッシングを受けた人もいる」「日本人は、西洋人を上に見るけど、それ以外の外国人を下に見る人もいる」などの現実をできるだけ伝え、来日後のギャップに苦しまないように努めています。

これまでの4年間で24人が来日しました。留学生は、日本語の勉強に加え、アルバイト、さまざまな手続き、進学や就職の情報収集や準備など、私たちが想像していた以上に忙しい毎日を送っています。日本では、大学か専門学校卒業の資格がないと就労ビザが取得できません。日本語学校に通う2年間で何とか大学等への進学レベルにまで達するように、日本語での理数科目の受験準備などできる限りのサポートをしています。それでも、留学生全員が現役での大学合格や就職ができるかというと、やはり難しい部分があります。ただ、現状ではシリア人に関しては難民認定を経ずとも「特定活動」という在留資格が出ますので、「浪人」した留学生には在留資格の切り替え手続きを含め、引き続き支援しています。

世界では今も難民が増えています。一方、受け入れる国際的環境に目を向けると、厳しい状況があります。「経済成長の遅れにつながる」「政情不安を招く」といった世論の反発などが要因で、政策として難民を受け入れる国が増えていきそうにないからです。

そうした中で、このような民間による取り組みが広がることに大きな意味があると思っています。日本社会の一員として難民を民間で受け入れていくことは、私たちができる国際貢献と人道支援です。できるところから取り組みを進めることで関わる人が増え、難民の窮状を理解して共に生きる社会になっていくと信じています。

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