シェアハウスこうじゅ(関西光澍館)開所から1年 仕事や住まいを失った人の生活再建を支援して 

沖野充彦施設長(大阪希望館事務局長)の話

シェアハウスこうじゅは、住まいの支援を通して、生活困窮者の生活の立て直しと、見守りや援助を必要とする人へのサポートという二つの役割を担っています。

昨年2月の開所から半年ほどは、新型コロナウイルスの影響で住まいを失った人からの入居希望が主でした。特にゴールデンウイーク以降、予想以上に相談が増えていき、緊急を要しました。そのほとんどが、派遣社員や非正規労働者の方です。もともと低賃金で働くために蓄えが少なく、雇い止めや解雇、減給によって家賃が払えなくなってしまったのです。

「Zoom」で取材を受ける沖野施設長

9月ごろからは身近な援助を必要とする人の相談が増えました。例えば、認知症と診断されて公的支援を受ける場合、申請手続きが必要ですが、一人暮らしのお年寄りの中にはそうした手続きができない方もいます。家族が助けてくれればいいのですが、家族と疎遠になっているなどで、それもなかなかできません。しかも現在は高齢者の単身世帯が増え、地域内の人間関係も希薄になっているため頼る人がおらずに、やがて住まいを失う事態が起きています。

コロナ禍によって住まいを追われた方は確かに多いものの、日本ではそれ以前から、ぎりぎりの生活を送っていた人がたくさんいるということです。孤立状態で暮らす人たちも潜在的に多いと言えます。

その要因は、格差が広がる社会構造にあります。「住まい」に関する支援の輪を広げていくとともに、全ての人の暮らしが守られるよう構造的な問題に目を向けていく必要があるのではないでしょうか。宗教界と生活困窮者支援の団体が手をとり合うこうじゅの挑戦が、そのきっかけや一助になればと思います。

こうじゅの務めは、公的な支援制度からこぼれてしまう人たちを支えることです。入居者には、ここでの生活を通して「一人ではない」ことを感じてもらい、譲り合う、思いやる、受け入れるという気持ちも育んで頂いて、入居者同士で助け合えるようになってほしいと願っています。それが、逆境でも生き抜ける力になると信じるからです。地域で困っている人たちに手を差し伸べられる、地域社会に開かれた拠点にしていきたいと構想しています。