TKWO全国7会場で60周年記念ツアー 感謝の思いをファンへ

「吹奏楽のための交響曲第3番」は60周年を記して委嘱した作品で、3楽章で構成される。保科氏は、「東京佼成ウインドオーケストラは日本最高峰の吹奏楽団だから」とその技能の高さを信頼し、第2楽章に9人のソリストを登場させている。

一方、「水面に映るグラデーションの空」は、特別編成バージョンで披露された。芳賀氏と、楽団のクラリネット兼コントラバスクラリネット奏者である原浩介氏が高校の同級生で共に吹奏楽部の部員だった縁から、原曲にはないコントラバスクラリネットが編成に加わえられた。

この二人の作曲家は、7、8の両日に東京、大阪で行われた演奏会に来場。さらに保科氏は、10日の広島公演の席上、自らが作曲した「風紋」がアンコール曲として演奏される際に急きょ、指揮を務め、聴衆を沸かせた。

アンコール曲「風紋」を作曲した保科氏が急きょ、広島公演でタクトを振った

7日の東京公演に訪れたサポーターズクラブ会員の40代男性は、「佼成ウインドの魅力は、演奏会の企画が多種多様で、その上、団員と観客との距離が近いと感じさせてくれることです。とても好きな楽団の演奏をやっと聴けて、うれしい」と語った。

鹿児島県から福岡公演に足を運んだ女子中学生は、「こんな機会はなかなかないので、思い切って聴きに来ました。部活では打楽器を担当演奏していて、今日は打楽器奏者に目がくぎづけになりました。感動的な演奏でした」と話した。

千秋楽を迎えた新潟公演でTKWOは、今年度の全日本吹奏楽コンクールの課題曲の一つ「吹奏楽のための『エール・マーチ』」を演奏。作曲した宮下秀樹氏が新潟県出身であり、同コンクールが中止になったことを踏まえての“サプライズ”だった。会場には宮下氏が来場していた。

演奏を聴いた女子高校生は、「コンクールで『エール・マーチ』を演奏する予定でした。吹きたいのに吹けなくて悲しい思いをしていましたが、今日の演奏を聴いて、心が晴れました」と笑みを浮かべた。

声援の代わりに、「Bravo」と書かれたタオルやボードを掲げる観客の姿も見られた。演奏には盛大な拍手が送られた

新潟公演の開演前、正指揮者の大井氏が奏者に向けて、「30年前の高校生の時に初めて佼成の生演奏を聴きました。夢のような時を過ごし、いつか佼成で演奏したいと思いました。これまで、佼成は舞台でそうした夢を見せる演奏を60年間続けてきました。これからも、聴いてくれた人の夢を叶える場所であり続けてほしい」と言葉をかけた。

終演を迎えると同時に、来場者からステージに熱のこもった拍手が贈られた。

【次ページ:全7回の公演を終えて 楽団員のコメント】