TKWO全国7会場で60周年記念ツアー 感謝の思いをファンへ
創立60周年を迎えた東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)は、11月7日から20日まで記念ツアーを行った。大井剛史氏(正指揮者)と総勢61人の奏者が全国7会場で演奏を披露。計4000人が会場を訪れた。音楽界の輝かしい未来を願う曲やTKWOが得意とする楽曲が奏でられ、60周年を迎えた感謝をファンに伝えた。特に、今年は新型コロナウイルスの流行で多くの吹奏楽の大会や演奏会が中止になったため、吹奏楽を愛する人々に感動や勇気を届ける演奏会を目指した。
感動の音楽を伝える使命を胸に
TKWOは1960年に、「佼成吹奏楽団」として発足した。当初は、本会の式典や行事での演奏が主な役割で、楽器未経験者を中心に15人のメンバーでスタートした。
73年に「東京佼成ウインドオーケストラ」に改称し、プロの吹奏楽団となる。国内外での演奏会で実績を重ね、現在はラジオやテレビに出演するなど多方面で活躍。日本有数の吹奏楽団として知られる。
今年は、60周年を迎え、さまざまな活動を計画していたが、新型コロナウイルスの流行で約50の公演、イベントが中止になった。それでも、団員たちは「待ってくれている人たちがいる」「感動の音楽を伝える使命がある」との思いで音楽と向き合い続けた。
10月、7カ月ぶりに演奏会を再開。今回の記念ツアーでも感染防止に努め、客席は1席ずつ間隔を空け、終演後の奏者による来場者の見送りも取りやめた。
ツアーは東京都、大阪府、広島県、福岡県、北海道、山形県、新潟県(日程順)の7会場で開催され、プログラムには、TKWOの歴史と未来への願いを紡ぐ4曲が選ばれた。
「吹奏楽のための第一組曲」と「リンカンシャーの花束」(フレデリック・フェネル校訂)は、桂冠指揮者を務め、「楽団育ての親」といわれるフェネル氏(1914-2004)が愛した曲。特に「リンカンシャーの花束」は、TKWOの演奏レパートリーの中でフェネル氏の最も思い入れのある曲だ。
これに加えて、“未来”への懸け橋として、保科洋氏作曲の委嘱作品「吹奏楽のための交響曲第3番」と、若手の芳賀傑氏が手がけた「水面(みなも)に映るグラデーションの空」が演奏された。
TKWOはこれまで、若手の作曲者の作品や、多数の委嘱作品を公演で積極的に演奏してきた。同じレパートリーばかりでは、古い曲しか残らず、新しい作品を世に出していくことで、作曲者の創作意欲の高揚につながり、音楽界全体の発展に寄与するとの願いからだ。