庭野光祥次代会長に聞く――『宗教協力が育む力』(1)
世界の人々に尽くすために
――2012年の設立時に、理事を受けられましたが、どのような思いからですか
RfP(WCRP/RfP)国際委員会の当時の事務総長であるウィリアム・ベンドレイ氏から連絡を頂きました。サウジアラビアの国王の提唱により、イスラームのイニシアチブで宗教間・文化間の対話に取り組む機関が設立されるという話でした。最初の数年間はサウジアラビアから資金も提供され、今後、世界で重要な役割を果たすだろうと。そして最後に、理事に推薦したいのだけれど、という内容でした。
とても光栄なお話でしたが、その時の気持ちは正直、「何か面白くない」というものでした。
諸宗教対話・協力というのは、現在国連でも、その重要性が広く認識され、国際的な潮流になっています。でも、1970年にWCRPが創設される以前は、「諸宗教対話」という言葉はそれほど知られておらず、また、認識されていても、それは理想で、実現性に疑問を持つ人が少なくなかったようです。そうした中で、WCRPが創設され、多くの先達の平和への願いと大変な努力によって諸宗教対話・協力に対する認識が高まっていき、21世紀になると宗教的過激主義を平和的に解決する方法として期待されるようになりました。資金も潤沢ではない中で、創設者たちをはじめ多くの先達がさまざまな課題に取り組み、成果を上げてきたからです。
それなのに、国際的な潮流になった今になって、資金が豊富な組織がつくられるなんて、「何か面白くない」という感情が湧いたのです。
その後、理事に推薦されたことを何人かの方に相談しました。すると、ほぼ全ての方が、「WCRPがあるのに、どうして新しい団体に関わらなければならないのですか。そんな必要ありませんよ」と言われました。まさに「わが意を得たり」という気持ちでした。けれど次第に私の胸の中がざわつき始めました。
ざわつきの中身を見つめてみると、〈私たちは世界が平和であるために、宗教協力を通して世界の人々に尽くすために活動していたはず。それなのに私は、「これは自分たちの活動だ」という、自己中心的な意識にとらわれて、成果を横取りされるような気持ちになっていたのではないだろうか。WCRPの活動は誰かとの競争ではないのに……。自分はなんて小さいのだろう〉という思いでした。
相談した方々は、もしかしたら私の意をくんで理解を示してくださったのかもしれません。そのおかげさまで、自身を落ち着いて振り返ることができました。「開祖さまがWCRPに込めた願いと、その実現に向けて実践されたたくさんのことを教えて頂いてきたのに、私はまるで反対のことをしようとしていた」と気がついたのです。