第16回奈良県宗教者フォーラム 庭野会長の基調講演 要旨
「一乗」の精神に基づき
論語に「和して同ぜず」という言葉があります。協力することは大切にしても、道理に外れたことには同調しないという意味です。私たちは、そのことを心しなければならないと思います。精神的に自立し、知見を深めて、特に宗教の智慧(ちえ)に順(したが)うことが不可欠です。
さらに、「和」とは、単に、表面的に波風の立たない状態を言うのではありません。自分の改めるべき点、相手の改めるべき点を、冷静に話し合い、共に生きる道を探していく。「和」とは固定化したものではなく、常に創造的なものであります。
本会もまた、「和」の世界の実現を目指して、精進を重ねてまいりました。その根底をなしたのは、仏教の「一乗」の精神であります。「一乗」について、私は日ごろ、次のような言葉で表現しています。
「人は本来、皆一つの乗り物(母なる水の惑星・地球)の同乗者なのだから、心をおおらかに、互いを認め合い、協力し合おう」
このような精神が、「一乗」に籠(こ)められていると思うのです。地球上の生きとし生けるものが、「宇宙船地球号」に同乗する運命共同体であり、皆が「家族」「兄弟姉妹」であります。より多くの人々が、私たちの住む世界を「一つ」と見ることができれば、世の中は、今よりもずっと平和になるはずです。