一食運動の浄財がエチオピアで 植林は地域の暮らしを支える原動力

植樹作業の休憩を取るワザ村の住民たち。両手を上げているのがベルへ・バライさんだ

苗木の自宅栽培増加 農業を生活の基盤に

当時、同郡は土地の生産性が低く、必要な食料が確保できずに貧困状態に陥る村が多くあった。そうした村の中から、木を育てるのに必要な水が入手しやすい数カ所を事業地に定めた。同時に、木が大地に根付くよう苗床で種をまくことからスタート。人やロバなどの家畜が、育てた苗木を植林地に運んでは植えるという作業を繰り返してきた。

25年間に全事業地で3000万本以上の苗木が植樹された。基金の浄財は、樹木の種や肥料、苗床の整備、農業用具の購入費用のほか、事業を支える人件費に充てられ、支援総額は昨年度までで2億3641万2965円に上る。

女性が苗床から苗木を入れた籠を背負い、ロバにも担がせて500メートル先の植樹場所まで運ぶ

今回、一行が最初に訪問したのは、ティグレ州の州都メケレから南西50キロ先にあるワザ村。車で2時間かけて到達した。小高い丘から眺望すると、眼下に広がる平原とそれを取り囲む四方の丘の全てが事業地だという。東京の町が一つ、二つはすっぽりと入るほどの広さだ。そこでは住民約1000人が植樹作業に携わっている。4、500メートル離れた苗床で育てた苗木を籠に入れ、頭上に載せて運ぶか、ロバに担がせて輸送していた。

RESTでは、植樹に携わる住民に賃金を支払い、困窮する彼らの生活を支えてきた。同時にそれは、森が再生して土壌が改善し、収穫量が増えて生活が豊かになることで住民に植樹の重要性を理解してもらうためでもあるという。

REST本部の植林事業責任者であるワレダカル・アスバハ氏(40)は、事業地に常駐するスタッフが住民のサポート役に回り、植樹活動のアドバイスを行うことが中心の任務と説明する。「住民の皆さんの手によって森が回復し、持続可能な農業を展開してほしい。それが真の復興につながるから」と語った。

各村の植林事業地を訪れ、RESTの同事業責任者のワレダカル・アスバハ氏から森の再生状況について説明を受ける本部職員

ワザ村の事業地で主に植えられているのは、葉が家畜の飼料となるサスパニアや、生育が早く燃料や建材になるユーカリの木。根が張り、畑のあぜ道に適した樹木やオレンジなどの果樹もある。

作業する住民の一人、ベルへ・バライさん(60)は、「木が増えたことで地下から水が出るようになりました。井戸が利用できるおかげで、以前より収穫が安定しています。この地が実り豊かな森になるのを見たい」と語る。

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