広島県下5教会の会員有志で構成 NPO法人「HRCP」が設立から20年

広島平和記念資料館の展示物について、訪れた学生に説明するHRCPメンバー

広島県下5教会の立正佼成会会員有志で構成されるNPO法人「ヒロシマ宗教協力平和センター」(HRCP)が設立から20年を迎えた。これまでの活動を振り返るとともに、上田知子理事長の話を紹介する。

HRCPは1999年、人類史上初めて原爆が投下された“ヒロシマ”の地から、平和を発信していきたいとの願いで設立された。現在、被爆体験証言者8人を含め、ボランティア約40人が、主に全国から平和学習に訪れる学生や青年などの受け入れにあたっている。

爆心地に位置する広島平和記念公園には、原爆犠牲者に慰霊の誠を捧げるさまざまな碑がある。案内役にあたるピースボランティアはそれぞれの説明を行い、〈戦争は二度としてはいけない〉という思いを伝える。また、原爆供養塔前などで行われる慰霊式のサポートもしている。平和学習では、被爆体験証言者による講演も行われている。HRCPでは、海外からの訪問者にも英語で対応。さらに、学校や諸団体からの要請に応じて、被爆体験証言講話や被爆体験伝承講話の講師も派遣している。

原爆の被害を紹介する広島平和記念資料館の案内では、スタッフが館内資料の学びを深め、案内のポイント、時間配分、伝わりやすい説明の仕方などを検討。自作の「資料館案内資料」は、何度も改訂が重ねられている。

啓発活動にも力を入れてきた。地域の催しなどではHRCPの活動内容を紹介するブースを出展。毎月6日には、広島教会で行われる「広島原爆殉難犠牲者慰霊供養」後、原爆に関する学習会を実施している。このほか、年間の活動記録、平和学習参加者の感想、証言者の手記などをまとめた活動報告書『おりづる』を毎年、発行している。

これまでに、平和学習で受け入れたのは763団体、約2万6000人に上る。訪れた学生たちからは、「学んだことを周りの人に伝えていかなくてはいけないと思いました」「平和に貢献できる大人になりたい」など、毎回多くの反響が寄せられる。

原爆投下から74年が経ち、被爆体験をした生存者が年々減少している。また、戦争を知らない世代が増え、“記憶”の風化も進んでいる。こうした状況を踏まえ、近年、力を入れているのが証言者の体験談の録画や文書化、手記の保存といった「継承活動」だ。

2014年からは、被爆者の体験を伝える人材を育成する「伝承者養成事業」を開始した。証言者本人から体験談や戦争への思いを何度も聞き、伝承者が原稿を作成。伝承者が「自分自身の体験」として語れるように訓練を重ねる。これにより、被爆当時の惨状や証言者の平和への願いを人々に「直(じか)に伝える」ことが期待されている。

【次ページ:上田知子理事長 談話】