一食平和基金が支援するカンボジア国立仏教研究所 ソー・ソクニー所長が事業報告 共に平和な未来を築くために

仏教研究所の蔵書約2万冊のデータベース管理について説明する職員(写真=今年4月の一食研修ツアー「カンボジア事業視察」から)

事業の成果は、大きく二つあります。一つは、『カンプチヤ・ソリヤ』の発刊や古文書の復刻が軌道に乗ったこと。特に、『カンプチヤ・ソリヤ』が全国の宗教局や寺院へ定期的に配布できていることに大きな意義があると思います。

もう一つは、職員の蔵書管理能力が大幅に向上したことです。以前は、国内の宗教や文化に関する書物を最も多く保有する仏教研究所の強みを生かした図書館運営ができず、蔵書の書誌情報がしっかりと管理されていませんでした。

そこで、ITを活用したマネジメントに強い図書館運営の専門家による研修を実施し、受講した職員が約2万冊の蔵書の整理やリストの作成を行い、蔵書のデータベースを構築しました。これにより、図書館の利便性が大幅に向上しました。加えて研究所のウェブサイトでの蔵書検索も可能にし、入館者の急増につながっています。

そもそも、仏教研究所が一食平和基金の支援を受けることになったきっかけは、今から40年以上前にカンボジアで起きた、ポル・ポト政権の弾圧政策にあります。国内の仏教書や関連資料が焼失し、僧侶は虐殺などで激減しました。仏教研究所も蔵書は散逸し、職員や研究者が殺害されて閉鎖に追い込まれ、カンボジアの仏教は壊滅的被害を受けたのです。

その後、1990年代初頭まで続いた内戦を経て新政権が誕生すると、仏教研究所の活動も再開され、新たな仏教研究所の建設計画が進められました。その時、カンボジアの再建は仏教の復興なしには不可欠との観点から、立正佼成会が建設に協力する意向を示してくださったのです。95年から2002年まで実施された開祖さま(庭野日敬開祖)の卆寿記念事業として、一食平和基金から研究所の建設費1億2400万円が拠出されました。

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