エネルギー転換を図るドイツの事例に学ぶ(2) 今後、求められる進路とは

映像作家の鎌仲氏

この中で、シュラーズ氏は、「風力や太陽光などは不安定だから、別のベース(ロード)が必要という考えがあるが、それは古い考え方。自然エネルギーがドイツみたいに30%を超えると、必ずどこかに自然エネルギーがあり、それがベースになる。そしてそれは大きくなっていく」と話した。加えて、エネルギー効率といった問題を考えると、今後電力供給は、需要が高まる日時と必要のない日時に「フレキシブル(融通が利くこと)」に対応できることが重要になると説明。「原子力の問題は、すぐにつけたり止めたりができないこと。石炭も、これが難しい。ガスはできるので、自然エネルギーのベースの上に、天然ガスを使う。そのように考え方を変え始めると、議論全体が変わっていく」と述べた。

さらに、再生可能エネルギーのコストが低下しているため、「原発をつくることに、経済的な意味はない。自然エネルギーの割合が高まると、考え方を変えなければならない」と強調した。

鎌仲氏は、近年の実際の供給量を見ると日本でも再生可能エネルギーの割合が高まっており、「これは世界の常識では?」と問い掛けた。シュラーズ氏は、再生可能エネルギーが大きく伸びる地域はアジアと予想。その要因として、2016年の中国の太陽光発電は34ギガワットを記録し、ドイツが10年かけた発電量を1年で実現したと話した。また、インドは20年までに中国の2倍を成し遂げる目標を掲げているほか、インドネシア、タイなどでも投資が盛んで再生可能エネルギーのコストは下がっていくと語った。

FoE Japan事務局長の満田氏

この後、満田氏が、日本で現在、エネルギー基本計画の見直しが行われていることを解説。国民一人ひとりがこれを注視し、自らの考えを政策検討や政治の場に伝えていく努力が大事になると語り掛けた。

シュラーズ氏はドイツでも、政府が再生可能エネルギーの推進を決めても、当初は少なからず大手電力会社の抵抗が見られたが、再生可能エネルギーを求める利用者が増え、それまでの契約が減った結果、ビジネスモデルを変えようとしていると報告した。ただし、シュラーズ氏は脱原発を進める上で国民が心に留めておくべきこととして、「大きな会社は変化が難しい。私たちはそのことを理解する必要がある。倫理委員会でも、原子力発電所に勤めていた方々は悪い人ではありませんと指摘したが、これは大切なこと。仕事が必要であった人、原子力が本当に役立つと思って働いていた人たちであることを理解すべき」と話した。

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