庭野平和財団GNHシンポジウム特集1 哲学者の内山氏を進行役に鼎談
『現代社会とパラダイムの転換――私たちはどこへ向かおうとしているのか』をテーマに10月18日、庭野平和財団の「第9回GNH(国民総幸福)シンポジウム」が開催された(ニュース既報)。この中で、NPO法人「森づくりフォーラム」代表理事で、哲学者の内山節氏を進行役に、沖縄・伊是名島で持続可能な地域づくりに取り組むNPO法人「島の風」代表の納戸義彦氏、新潟・小千谷市若栃で活動する地域起こし団体「わかとち未来会議」代表の細金剛氏による鼎談(ていだん)が行われた。その内容を紹介する。(文中敬称略)
島の風(沖縄・伊是名島) 活動理念「島のこしが島おこし」
島を残す。それは、景観としての島の風景だけではなく、それを支え維持してきた島民の生活やそこに流れるコミュニティの文化をも含め残し伝えるという考えである。それも硬直した復古主義に陥ることなく、現代社会の中で可塑的な柔軟性を持ちながら進めていこうとするもので、平易にいえば、生活実践の中で、オジイ、オバアの笑顔を残し、伝承していこうという考えである(同ウェブサイトから引用)
わかとち未来会議(新潟・小千谷市若栃)
小千谷市市街より南部へ約10kmに位置する、標高150m前後の山村集落。世帯数39世帯、人口約130人ののどかな地であります。集落の周りは山々に囲まれ、四季折々の景観が楽しめます。冬は山間地のため、雪が多く降りますがそれがもたらす水は山々に蓄積されて、湧き水となり棚田の水田を潤します(同ウェブサイトから引用)
内山 納戸さんは沖縄県の伊是名島、細金さんは新潟県の若栃村で地域起こしの事業に取り組んでいらっしゃいます。
私が納戸さんの住む伊是名島を訪れた時、印象に残ったことがあります。二人で散歩に出て、ご近所のおばあさんのうちに寄ろうという話になり、庭に入っていくと、縁側にお茶とお菓子が置いてありました。ついにおばあさんの顔は見なかったのですが、私たちは勝手にお茶を飲んで帰ってきました。元々そういう風習がある島だそうですね。
納戸 「イヒャジューテー」という風習です。朝起きたらまず、いつ来るとも分からないお客さんのためにお茶の用意をする。留守にする日もそうします。伏せてあった湯飲みが何個ひっくり返っているかで、その日来た人数が分かるのです。伊是名島の生活スタイルですね。
内山 今、そうした昔ながらの風習や人とのつながりにひかれる人が増えている気がします。沖縄は「観光立県」になり、先島や石垣は観光地化されました。しかし、人々の関心はむしろ、観光地化されていない場所へと移ってきているのではないでしょうか。
納戸 そうかもしれません。これまであちこちで語られてきた観光というのは、観光産業の話ばかり。つまり、金儲(もう)けの話です。しかし観光は産業としてだけでなく、もっと多様な豊かさのある、いろいろな側面を持った、懐の深いものだと思います。ですから、年間どれくらいの観光客を誘致できたかという、数字に表れる成功事例としての観光ではなく、ゆっくりと時間をかけて島の人々が独自に編み出していく「観光」を目指したいのです。