国連100万ドル基金の調印式 川端理事長と中満代表がスピーチ 核廃絶署名に携わった会員の声

川端健之・立正佼成会理事長スピーチ要旨(日本語訳)

スピーチにあたり、核兵器禁止条約の採択に貢献したことが認められ、2017年のノーベル平和賞を受賞された「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)に対して、心からの祝意を表したいと思います。今回の受賞は、核兵器の廃絶が、世界中で平和を愛する人々の切なる願いであることを象徴しています。ニューヨークの国連本部で今年7月に採択されたこの条約は、核兵器廃絶を早期に実現させるための、大きな力となるものです。核兵器はいかなる状況下においても使用されてはならず、また、可及的速やかに廃絶されなければならないことに、疑いの余地はないのです。

さて、これから私は、皆さまを、“タイムマシン”によって、1978年6月にここ国連本部で開催された第1回国連軍縮特別総会(SSDI)へとお連れしたいと思います。この総会の席上、日本の在家仏教教団である立正佼成会の庭野日敬開祖は、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)の代表としてスピーチを致しました。

庭野開祖は、世界の為政者、とりわけ米国のカーター大統領とソ連のブレジネフ書記長に対して、「危険をおかしてまで武装するよりも、むしろ平和のために危険をおかすべきである」と述べました。私はこのメッセージが今もなお、大きな価値を有していると信じています。軍拡競争が人類を滅亡させる前に、人類の手によって軍拡競争を終わらせなければなりません。

1982年には第2回国連軍縮特別総会が行われ、この総会を機に始まった「世界軍縮キャンペーン」を推進するために、立正佼成会は100万米ドルを国連軍縮局(現・国連軍縮部)に寄付いたしました。さらに当時、日本国内において、本会が加盟している新日本宗教団体連合会(新宗連)と合わせて約3700万筆にも及ぶ署名を集めて国連に提出しました。これらの署名は、国連加盟国に核廃絶に向けた真摯(しんし)な取り組みを要請したいという、当時の日本人の切なる声を象徴したものです。

また、1982年の私たちの財政的な貢献は、「一食(いちじき)を捧げる運動」を通じて、立正佼成会の会員一人ひとりが、結集して取り組んだ努力の賜物(たまもの)であります。一食を捧げる運動とは、1975年に始まったもので、以来、本会の会員は、毎月1日と15日に一回の食事を抜き、その節約分を献金し続けています。これは、核兵器のない世界を早期に実現することを念願する、広島と長崎での惨劇を経験した日本からの、力強い要請でもあったのです。

1988年の第3回国連軍縮特別総会を契機に、国連によって管理されてきた私たちの基金の利子が、現在に至るまで、主に国連アジア太平洋平和軍縮センターの活動に使われてまいりました。そして、2016年に国連軍縮部と本会は、同センターが実施する軍縮教育に特化したプロジェクトの推進のために、基金の利子のみならず、原資も活用することに合意しました。このサイドイベントで、軍縮担当上級代表の中満泉さまと「覚書」を交わします。

仏教には、「五戒」という教えがあります。“汝(なんじ)、殺すなかれ”と説く「不殺生戒」は、世界の主要宗教によって共有される最も重要な教えだと、私は信じています。核兵器は、人々を殺し、地球の環境を破壊する兵器です。それらは、道徳的にも倫理的にも許されるものではありません。核兵器は、決して人類と共存することはできないのです。

仏教徒として、私たちは核兵器のない世界を実現するために、これからも、国連をはじめ、志を同じくする個人や団体と協働してまいります。

軍縮・不拡散教育は、長期的視点で核軍縮を実行するための道筋になるものと信じます。本会は、国連軍縮部、国連アジア太平洋平和軍縮センターとのパートナーシップを今後も継続していくことを重ねて表明させて頂きます。

(文責在編集部)

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