『グローバル化への対応』テーマに「人間と科学」研究学会が大会 中央学術研究所が後援

経営者と研究者、本会教会長の3人が研究成果を発表

『グローバル化への対応と私達が取り組むべきこと』をテーマに、中央学術研究所が後援する「人間と科学」研究学会の「第29回研究大会」が9月16日、佼成図書館(東京・杉並区)で開催され、同学会メンバーをはじめ立正佼成会職員ら47人が出席した。

中央学術研究所の客員研究員らで構成する同学会は、「知的創造」「智慧(ちえ)の発信」「知的交流」を目的に、環境や教育問題、人材育成などの社会事象を取り上げ、研究大会を毎年実施している。

今回は、経営者と研究者、本会の萩原透公古河教会長(元国際伝道本部次長)の3人が発表。最初の『グローバリゼーションの光と影――企業のグローバル化事例』と題された講演では、「経済のグローバリゼーションのメリット・デメリット」などについて解説がなされた。

この中で、グローバル化によって、人、モノ、金、技術などの生産要素が地球規模で移動し、経済活動が活発になされることで開発途上国の経済成長が見込まれ、国民所得の向上につながると説明。一方、国際分業の固定化(先進国の工業品、途上国の農産物・鉱物生産)が進み、途上国に工業が育ちにくくなる“南北問題”が生じるなどのデメリットを指摘した。

また、トランプ米大統領による自国経済を最優先とする保護主義政策や、欧州におけるポピュリズム(大衆迎合主義)政治の台頭など、反グローバリズムの動向にも言及。「政治は経済合理性だけを追求するのではなく、共存共栄の生き方を意識した政策を目指し、格差拡大の是正を図る分配政策に取り組むべき」との見解を示した。

このほか、自身の会社がフランスの企業と合弁会社を設立するに至った経緯を紹介し、「文化や商習慣、労働慣行の違いなど、多様性を尊重することは容易ではないが、『中道の精神』と八正道の『正見』を心がけたおかげで、日仏両企業にとって均衡のとれた結論を見いだせた」と語った。

次の『大学のグローバル化とグローバル人材の育成』と題した講演では、学生の質や大学運営に関する課題を指摘。少子化の影響で入学定員を確保できない大学の増加、入学者の学習意欲と基礎学力の低下が深刻化しているといった問題が提起された。講演者は、大学教育のグローバル化以前に、教員が学生の個性や入学までに受けてきた教育内容について理解し、個別に対応していく重要性を強調した。

さらに、日本人留学生や研究者へのサポートについて触れ、「グローバルな人材の育成には、留学費用や帰国後の就職など、国を含め多方面からの支援が不可欠」と訴えた。

最後に、『宗教法人のグローバル化対応』と題し登壇した萩原教会長は、本会をはじめ10宗教法人の海外布教や国際活動の歴史を、各教団の特徴と比較しながら説明した。

この中で、本会に関して、現在20の国や地域にある66拠点で、布教活動が展開されている実情を紹介。現地公用語での布教を基本とし、現地会員の布教リーダーの育成、現地の文化・環境に即した儀礼儀式の研究と開発に取り組んできたことなどを発表した。また、平和使節団などの海外交流活動を通して、国際的な布教伝道の重要性に気づいた会員が、日本に滞在する外国人に対し意識的に仏教を伝えるようになった事例を報告した。

この後、講演者3人によるフロアディスカッションが行われた。