本会一食平和基金が支援するカンボジア・仏教研究所 運営委副委員長らが視察

一食平和基金運営委の中村副委員長は、宗教省庁舎で、ヒム・チェム大臣(右)と懇談

立正佼成会一食(いちじき)平和基金運営委員会の中村記子副委員長(習学部部長)と同運営委員、事務局スタッフの3人が、5月8日から13日まで、「カンボジア仏教研究復興支援事業」視察のため同国を訪れた。

仏教を国教とするカンボジアでは、仏教徒が国民の9割以上を占める。かつて、寺院では僧侶が子供たちを教育し、文化を伝承するなどの重要な役割を担ってきた。仏教研究所は1975年まで、国の重要な機関として僧侶の育成や関連書籍の出版に携わってきた。しかし、同年、首都プノンペンを占領したポル・ポト政権は仏教を弾圧。仏教研究所では所蔵する経典や書籍の大半が処分され、多くの僧侶が虐殺された。

その後90年代初頭に内戦が終結。仏教研究所再建に関する支援要請を受けた本会は、庭野日敬開祖の「卆寿記念事業」として一食平和基金から1億2400万円の建設費を拠出し、2002年に再建された。

しかし、07年に研究所の有力な支援団体が撤退し、運営費不足に陥り、スタッフの離職が相次いだ。その影響で蔵書管理機能が低下。僧侶の必読誌である宗教文化雑誌『カンプチヤ・ソリヤ』も休刊に追い込まれた。

こうした事態に対し、同運営委員会では、16年から18年までの3年間、新たに「カンボジア仏教研究復興支援事業」を実施。同基金から約2200万円が拠出された。

仏教研究所のソクニー所長らと面会

今回の視察は、同事業の進捗(しんちょく)状況を確認するとともに、仏教によるカンボジアの復興に関する意見の交換が目的。9日午前、一行は仏教研究所を訪れ、ソー・ソクニー所長と面会した。

席上、同所長は支援に対する謝意を表し、事業の成果を紹介。昨年、『カンプチヤ・ソリヤ』を復刊し、計画通り年4回、各1000冊を発行したほか、図書館運営の専門家による研修を開催してスタッフの育成を図り、蔵書管理能力が大幅に向上したことなどを報告した。

また、今後の課題として、研究所の収益確保を目的とした『カンプチヤ・ソリヤ』の有料販売を挙げ、その許可を得られるよう宗教省への働きかけを強めていると話した。さらに、カンボジアの宗教文化に関する文化講演会を継続的に実施しながら、参加者へのアンケート調査や分析を進めていく意向を示した。その上で、「カンボジアが仏教を基に発展を遂げられるよう、今後も支援をお願いしたい」と述べた。

本会一食平和基金が支援するサムロンアンダエト寺院図書館を視察

これを受け、中村副委員長は、浄財が国の未来を左右する仏教研究所の復興に生かされることは「光栄なこと」と応答。「事業成果だけでなく、研究所の皆さんが仏教の復興にかける思いも、日本で『一食を捧げる運動』に取り組む会員の皆さんに届けます」と語った。

同日午後には、市内の宗教省庁舎を訪れ、中村副委員長がヒム・チェム大臣と懇談した。席上、大臣は一食平和基金によるこれまでの支援に対し謝意を表明。中村副委員長は「一食を捧げる運動」の意義を説明した上で、研究所の発展に期待を寄せた。

なお一行は、10日に本会プノンペン法座所を訪問して現地会員と交流したほか、シャンティ国際ボランティア会(SVA)による仏教学校の図書館推進事業や、日本国際ボランティアセンター(JVC)の農村開発プロジェクトを視察した。

ポル・ポト政権の仏教弾圧

1975年から79年まで、カンボジアで共産主義思想に基づいた独裁的な統治を行ったポル・ポト政権は、政権を脅かしかねない元政府関係者や教育者、医師、技術者といった知識層の国民を虐殺。これにより200~300万人の国民が命を落としたとされる。この中には多くの僧侶も含まれ、仏教をはじめとする宗教、文化、教育が徹底的に弾圧された。生存した僧侶も還俗(げんぞく)させられ、寺院の9割が破壊されたことで、カンボジア人の精神的な基盤である仏教が衰退した。

一食を捧げる運動

月に数回食事を抜く、あるいはコーヒーなどの嗜好(しこう)品を控えて、その食費分を献金して国内外の諸課題に役立てる運動。
http://www.ichijiki.org