アフガニスタン難民の帰還者急増と直面する危機 JENの現地スタッフが緊急支援活動を報告

NPO法人「JEN」(ジェン)による「アフガニスタン緊急支援 活動報告会」が5月18日、東京・新宿区のJEN東京本部事務所で行われた。

1979年のソ連軍による侵攻、米国同時多発テロ後の北大西洋条約機構(NATO)軍による空爆など、アフガニスタンでは30年以上にわたって紛争が続き、多くの国民が隣国パキスタンなどへ逃れた。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2015年現在、アフガニスタン難民は270万人に上る。シリアに次いで世界で二番目の多さだ。

一方、アフガニスタン難民の最大の受け入れ国であったパキスタンは昨年、難民居住区域の治安悪化を理由に、難民を帰国させる政策を決定。この年にアフガニスタンへ帰還した難民は62万人を数え、前年比3倍以上に急増した。

18日の報告会の冒頭、パキスタンに駐在するシニアプログラムオフィサーの中嶋秀昭氏が、アフガニスタン難民を取り巻く状況を説明した。パキスタンにいる難民は家財を売り払った資金で母国に戻るものの、その多くは帰国後、住む家も仕事もなく、国境付近の街でテント生活を余儀なくされていると語った。こうした現状に対し、JENは東部のパキスタンとの国境付近にあるアフガニスタンのナンガハル県で、働き手となる男性のいない世帯や、高齢者、障害のある家族を持つ世帯など、1000世帯を対象に、生活の支援を行っていると報告した。

JENのアフガニスタン事務所のハミッド氏が緊急支援活動について報告した

続いて、JENのアフガニスタン事務所でプロジェクトマネジャーを務めるハミードラ・ハミッド氏がスピーチ。アフガニスタン国内での支援活動に触れ、水タンク、バケツ、鍋、せっけん、毛布、プラスチックシートなど、生活支援物資の配布について、現地の写真や映像を交えて説明した。また、アフガニスタン国内では今も、前政権勢力の「タリバン」が大きな影響力を持ち、南部には「イスラーム国」(IS)を名乗る過激派組織が勢力を拡大するなど、治安の面でいまだ厳しい状況にあることを解説。その上で、「長年にわたる紛争によって国が疲弊し、急増する帰還者の受け入れ体制が整わない」と述べ、緊急支援が、「今日を生きる人々に対して大きな支えとなっている」と、活動の意義を強調した。

このほか、JENがアフガニスタンで行っている教育支援や、子供たちに向けた衛生教育事業の取り組みを紹介。継続的な支援が求められる現地の実情を伝えた。