ウクライナが「忘れられた戦争」とならないように――教皇の警鐘(海外通信・バチカン支局)

ロシア軍は昨年12月29日、ウクライナのキーウ、ハルキウ、リヴィウ、ドニプロ、オデーサ、ザポリージャなど主要都市を標的に大規模なミサイル攻撃を実行した。ウクライナ側には、約30人の死者が出た。

ウクライナ空軍のユーリイ・イフナト報道官は、「2年前に始まったロシアによるウクライナへの侵攻以来、最も強大な攻撃であり、その標的の多さから察して、ロシアがウクライナ国家を壊滅させる意図を持つことは明らか」とコメントした。

ウクライナの東方典礼カトリック教会のスヴィアトスラフ・シェヴチュック首位大司教は昨年末、ローマ教皇フランシスコに親書を送り、ロシアによる大量ミサイル攻撃がもたらした人命の喪失と物的被害について報告し、国民の苦しみを伝えた。教皇は1月3日にシェヴチュック大司教宛に返書を記しており、バチカンの公式ニュースサイト「バチカンニュース」はこのほど、その内容を報じた。

この中で、教皇は「殉ずるウクライナへの連帯」「死者のために泣き、彼らを神の慈悲に託し、負傷者を慰め、何らかの形で苦しむ人々を抱擁する」「絶望的となりつつある状況の中で、人々に希望を与えようと努める司牧者(教会指導者)たちに連帯する」と表明した。

また、「(中東地域の状況などによって)より劇的となりつつある国際情勢の中で、ウクライナ侵攻が“忘れられた戦争”となる危険性がある」と警鐘を鳴らし、「ウクライナ侵攻の上に沈黙が降りないようにすることがわれわれの義務である」と訴えた。それは、「単に、悲劇的な事実の前でその恐怖の記憶を失わないようにするだけでなく、(戦争に関して)責任を持つ全ての人々と国際共同体を、平和的解決に向けて努力させる」ことだという。

さらに、「戦争は狂気の沙汰で、常なる敗北である」と戒め、「パレスチナ、イスラエル、ウクライナなど、多くの戦地にいる人々のために祈ろう」と呼びかけた。シェヴチュック大司教に対しては、「ウクライナで武器の轟音(ごうおん)が止(や)み、正義に適(かな)った和平へのプロセスが始まるまで、世界に向けて響き渡るアピールを続けていく」と約束した。

毎週日曜日の正午の祈り、水曜日の一般謁見(えっけん)、さまざまな公式の場を通し、教皇が世界各地で起きている戦争、特に、ウクライナと、パレスチナ、イスラエルでの戦争終結をアピールしない日はない。1月14日の正午の祈りの席上では、「戦争そのものが人類に対する犯罪であることを忘れないように」と訴え、「平和教育」の重要性について説いた。