第20回奈良県宗教者フォーラム 元神宮司庁の村瀬氏が基調講演

宗教者の代表によるパネルディスカッションでは、人々が自然の中で信仰心を深めてきた歴史が話題に上った

『日本のこころと宗教の役割――信仰の杜を伝える』をテーマに、第20回奈良県宗教者フォーラム(主催・同実行委員会)が9月12日、奈良・橿原市の橿原神宮「神宮会館」で開催された。県と市が後援した。

同フォーラムは、現代社会で宗教が果たす役割を考えることを目的に、同県の諸宗教者が一堂に会し、交流と対話を深めるもの。フォーラムの開始以来、立正佼成会奈良教会も運営の一端を担っている。

当日は、宗教者や市民、奈良教会の会員ら約90人が参集。開会前には、同神宮の内拝殿で「世界平和祈願祭」が執り行われ、参加者は心一つに平和の祈りを捧げた。

フォーラムの冒頭、樋口俊夫実行委員長(廣瀬神社宮司)、久保田昌孝同神宮宮司が挨拶し、今回のテーマと趣旨を紹介。来賓を代表し、山下真県知事が挨拶に立った。

村瀬氏は、神宮宮域林の経営計画を史料とともに紹介し、森林の持続可能性を高める工夫を語った

続いて、元神宮司庁(伊勢)営林部神宮技師の村瀬昌之氏が、『神宮宮域林――モリの恒続性』と題して基調講演を行った。村瀬氏は、伊勢神宮に広がる宮域林が、100年前に制定された「神宮森林経営計画」に沿って管理されてきた歴史を説明。同計画は、薪炭の供給などで森林本来の機能が失われていた当時、「風致増進」「水源涵養(かんよう)」「(式年遷宮の御造営用材を伐=き=り出す)御杣山(みそまやま)復元」を願って策定されたものだと話した。

また現在、「御杣山復元」に向けて御造営用材のヒノキを育てる中で、ヒノキとその他の自然双方に悪影響が生じないよう、間伐を行って生態系の安定に努めていると解説。「共存共栄ではなく“共存共貧”で、自然界と折り合いをつける」ことが、森林の持続可能性を確立させると強調した。

宗教精神を次世代に

この後、宗教者の代表によるパネルディスカッションが行われた。春日大社の西村泰宏禰宜、金峯山寺の五條永教執行長、本会の中村浩士奈良教会長が登壇し、橿原神宮の長倉健一権禰宜がコーディネーターを担当。パネリストの3師は、信仰の地である春日山や吉野山の事例を踏まえて、人々が自然の中で育む信仰心の尊さや、森林の保全活動などを通して宗教精神を次世代に伝える大切さなどを語り合った。最後に、辻村泰範副実行委員長(西大寺執事長)が閉会挨拶を述べた。