WCRP日本委 「人身取引反対世界デー」を前にオンライン学習会

学習会では、宗教者による人身取引防止に向けた取り組みを学んだ(「Zoom」の画面)

国際労働機関(ILO)など3団体が発表した報告書によると、2021年時点での強制労働被害者は世界で約2800万人に上る。この中には、日本で経済的、性的な搾取に遭った人々も含まれる。こうした状況への理解と関心を深めるため、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会人身取引防止タスクフォースは7月1日、オンラインで学習会を開催した。宗教者ら約90人が参加した。

テーマは、『宗教者としていのちの尊厳について考える~国際人権とSDGsの視点から人身取引防止を目指して~』。国連が定めた「人身取引反対世界デー」(7月30日)を前に、一人ひとりの持つ命の尊厳を認識し、人身取引防止に向けた宗教者としての行動を考える機会とすることが目的だ。

当日は、カトリック大阪大司教区社会活動センター「シナピス」の松浦・デ・ビスカルド篤子氏、WCRP/RfP日本委員会の篠原祥哲事務局長ら4人が国内での人身取引防止に向けた取り組みを伝えた。

この中で、松浦氏は、2015年頃に、飲食店での強制労働から逃れたフィリピン人の母子を保護した体験を発表した。母子は、故国で日本人の父親に遺棄されており、ブローカーに「日本国籍の取得を手伝う」などと騙(だま)されて来日した約80人のうちの一組だった。事件発覚後、シナピスは行政の要請を受けて被害者に一時保護のシェルターを提供したほか、就職や在留資格変更のサポートなど、自立に向けた支援を展開。また、この事件を機に、行政から人身取引の被害者を保護する業務委託を受けたり、警察やフィリピン領事館と協力体制を継続したりしていると述べた。

篠原事務局長は、人身取引の被害者を支援するアジア諸国の宗教者から、日本を含めた先進国が加害者になっている現状を聞き、2020年に人身取引防止タスクフォースを設置したと説明。政府や企業、市民に対し、人身取引の根絶に向けた行動を呼びかける声明の発表と内閣府への提出、外国人技能実習生から強制労働や人権侵害の実態を聴く取り組みなどを実施してきたと報告した。今後も、国内での関心を高める学習会、被害者に対する生活支援などを行っていきたいと伝えた。

続いて、立正佼成会本部の加瀬育代スタッフ(総務部渉外グループ)が司会を務め、発表者4人によるパネルディスカッションが行われた。この中で、被害者の母国の文化を理解、尊重して支援活動にあたる大切さや、米国務省が「人身売買報告書2023」の中で日本の対応を4年連続で「対策不十分」と評価したことなどが確認された。