学林とINEBが「国際エンゲージド仏教青年リーダーフォーラム」 15カ国の青年が社会課題を議論
立正佼成会の学林では、仏教精神を基に具体的な実践のできる宗教者の育成を目指している。その一環として、紛争や貧困、差別といった世界の諸課題に対し、世界各国で社会の変革に取り組む仏教徒の青年が集結し、よりよい未来を創造するための智慧(ちえ)を共有する場を計画。「国際エンゲージド仏教青年リーダーフォーラム」と題し、4月11、12の両日、青梅練成道場(東京・青梅市)を拠点にオンラインで開催された。
このフォーラムは、学林と国際エンゲージド仏教ネットワーク(INEB、タイ)が共催したもの。INEBは、社会運動に携わる仏教者の世界的なネットワークとして、平和や人権に関する政策の提言や人材の育成など、幅広い活動を展開している。
当日は、異なる宗教間で生じる分断、女性や性的少数者への差別など、現代社会の課題をテーマとした4回のセッションを実施。INEBのメンバーや学林本科生、海外修養科生など、15カ国から約70人が参加し、活発な議論を交わした。
11日は、セッションⅠ『仏教と平和構築』、セッションⅡ『持続可能な開発と仏教経済学』が行われた。この中で、セッションⅡでは、資本主義社会における経済格差を解消する方法を話し合った。マレーシアの社会活動家のヴィエンナ・ルーイ氏は、政府や銀行だけが金融を掌握する状況から脱却するため、仏教的な支え合いの精神を込めた仮想通貨(暗号資産)を作り、それを使って福祉活動や環境問題に取り組むことを提案した。
これらに対し、学林本科59期の女性会員(22)は、学林生が実践する生活様式「青梅モデル」を紹介。自然を生かした食物の栽培や、地域コミュニティーとの交流などを通じ、「仏教精神に基づいた分かち合いの経済」を創り上げるという目標を語った。
翌12日には、セッションⅢ『仏教とジェンダー平等』、セッションⅣ『実践的仏教&宗教協力:青年菩薩の役割』が開かれた。中でも、セッションⅣではINEBの活動家で台湾出身のドリン・ワング氏が、同団体が行う「仏教青年プログラム」(YBP)について説明。日本に限らず台湾でも仏教に懐疑的な青年が多く、一方で「訳も分からないままに、やみくもに信じればいいと思っている」年配者が多いと指摘し、同プログラムでは仏教徒に限定せず、さまざまな宗教を持つ人々が集い、「仏教」を切り口に豊かな生き方を模索し、世界の課題を共有して平和活動などを行い、仏教の大切さを伝えていると紹介した。
質疑応答では、学林本科60期の男性会員(28)が、日本の青年が生きづらさを感じる理由の一つとして、宗教への偏見が強い社会で信仰を持つことを友人に打ち明けられない実情を訴えた。周囲にどう発信すれば理解してもらえるかと、ワング氏に問いかけた。これを受け、ワング氏は、男性会員の「今の姿がそのまま答え」だとたたえ、「自分の経験、感情に基づいた心からの本音を語ることで相手の共感を得られる」と伝えた。
最後に、INEBのソンブーン・チュングプランプリー(ムー)事務局長と、杉野恭一学林学長が閉会あいさつ。杉野学長は、今後もさまざまな形で交流を重ね、地球規模の諸課題に取り組むための実践的仏教による方法を共に手をとり合って模索していきたいと、INEBと学林の両参加者に呼びかけた。