庭野平和財団 令和4年度公募助成先を発表 宗教的精神に基づく平和のための草の根活動に取り組む12団体を支援

公益財団法人庭野平和財団はこのほど、令和4年度の公募助成先として、国内の5団体に468万7000円、国外の7団体に4万3667ドルを支援すると発表した。助成金は立正佼成会一食(いちじき)平和基金からの指定寄附によるもので、「一食を捧げる運動」の浄財が使われている。

令和4年度の活動助成は、昨年までねらいとしていた「分断された社会の中の対話と協力」をさらに推進すべく、「宗教的精神に基づく社会・平和活動」「地域で展開される草の根活動」が対象。近年の世界情勢を鑑み、「移民・難民・国内避難民」「ジェンダー格差」「子どもの貧困」「宗教組織や宗教者による社会課題への取り組み(宗教施設の活用含む)」「テクノロジーの有効活用」の五つの課題への取り組みに焦点が当てられ、昨年9月中旬から10月中旬までの募集期間に申請された356件の中から、国内5団体、海外7団体の事業が採択された。内戦で傷ついた青少年のケアや、紛争によって母国を追われた人々への支援、ジェンダーに関する取り組み、諸宗教対話などさまざまな活動が取り上げられた。

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国内5団体のうち、「被爆者証言の世界化ネットワーク」(NET-GTAS)は、広島・長崎での被爆体験を世界に広め、「核兵器廃絶の国際的気運を高める」ことを目的に、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館に所蔵される1500本以上の証言ビデオの「多言語で字幕を付す事業」に取り組んでいる。今年度は20本以上のビデオへの翻訳、字幕付けを予定。また、ロシアによる紛争を踏まえてウクライナ語翻訳チームを立ち上げ、ウクライナ語のビデオ作品の制作も検討している。字幕を付された証言ビデオは、広島・長崎両平和祈念館などを来訪した諸外国の人々に閲覧されるとともに、インターネットを通じて世界に公開されている。

海外ではジェンダー問題に取り組む団体が多く、アフリカ・ケニアの「平穏な避難所」(Serene Haven CBO)もその一つ。同国では、性的虐待や搾取、貧困などが要因で、若い女性の早期妊娠が社会問題となっている。同団体では、その中でも「ジェンダーに基づく暴力」「10代の母性が抱える問題」「HIV/AIDS」という三つの脅威に立ち向かう事業を展開。10代で妊娠・出産を経験した女性とその子供の救出、教育や基本的ニーズの提供を目指し、現地の聾(ろう)学校と協力して聴覚障害のある10代の女子生徒287人を対象に、「三つの脅威」に関する啓発、子供の保護や性暴力から身を守るための基礎的トレーニングを実施する。

一方、芸術や文化によって「ジェンダー・ステレオタイプ」の問題に挑戦しようという試みもある。南米・コロンビアの「私たちは『平和』がつくれる協会」(Somos CaPAZes Association)では、首都ボゴタに住む男女20人、その子供40人を対象に、「ララバイ(子守歌)」の合唱コーラスを創設し、活動に取り組む中で自己認識や家庭内問題の解決を図る。実際のプロジェクトでは、参加する親子を対象にワークショップを実施。参加者は親子間のコミュニケーションの取り方、ジェンダーの平等化(家庭内での女性、男性の在り方を見直す)、争いごとの解決方法などを学ぶ。それらの学びを通して参加者が感じたことを自身の言葉で手紙に書き、それを歌にする。プロジェクトの最後には、親子が作った歌(ララバイ)を披露するコンサートの開催や、歌詞と楽譜を記録した冊子の制作なども予定している。