本会一食平和基金 令和5年度運営計画を発表 「貧困(飢餓)の解消」など7分野の国内外事業に2億1897万円

認定NPO法人ジェン(JEN)は国連WFPとの共同事業の中で、アフガニスタン・ナンガルハルの女性たちが作った栄養強化パンを小学校に通う子供たちに提供している(写真提供・JEN)

立正佼成会一食(いちじき)平和基金運営委員会はこのほど、中期運営方針(2018~23年)に沿って、令和5年度の運営計画を発表した。予算総額は2億1897万6000円。中期運営方針の最終年の今年も、一乗精神に基づく共生世界の実現を目指して「貧困(飢餓)の解消」「教育・人材育成」を重点とする全7分野(予備費を除く)の事業を展開する。また、NGOなど団体間の協力を支援する「ネットワークの強化」に力を注ぐとともに、「一食を捧げる運動」(一食運動)の中期推進計画(2018~23年)を基に、「一人でも、やりがいをもって実践できる一食」に向けて同運動の推進を図る。

国連WFPは、「ミャンマーにおける学校給食事業」を実施。コロナ禍の同国の小学校が休校期間中、給食の代わりに栄養強化ビスケットの配布を行った(写真提供・国連WFP)

一食平和基金は、会員が平和を祈り、苦境にいる世界の人々に思いをはせ、月に数回、食事を抜いた費用を献金する「一食運動」の浄財によって運営されている。

国連の『持続可能な開発目標(SDGs)報告2022』によると、新型コロナウイルスの流行で世界経済が停滞したことで、貧困削減に向けたさまざまな動きや流れが失速。この影響を受け、2020年には新たに9300万人以上が極度の貧困状態に陥った。さらに、小麦やトウモロコシなどを大量に輸出するロシアとウクライナの戦争によって、食品の流通が混乱し、食料や燃料、肥料などの市場価格の上昇にも拍車がかかった。その結果、世界の人々に食料が十分に供給されない状況が続いたことで最貧困層の食料不足が深刻度を増し、飢餓に苦しむ人々が今後、さらに増えることが懸念されている。

同基金運営委員会ではこうした現状を踏まえ、地球上の全ての人が富や資源をめぐる争いに巻き込まれずに、飢餓の不安がない環境を整えることが、持続可能な社会づくりに不可欠との観点から、「貧困(飢餓)の解消」を最重要課題の一つと捉え、1771万円を拠出。国連世界食糧計画(国連WFP)がコロナ禍の不況や貧困に加えて情勢不安の続くミャンマーで実施する学校給食プログラムを助成し、子供たちの栄養不良の回避や就学率の向上を目指す。「アフリカへ毛布をおくる運動」は、昨年の最終キャンペーンで収集された毛布の現地配付のほか、配付状況の視察にも「一食運動」の献金が充てられる。

認定NPO法人日本国際ボランティアセンター(JVC)は「パレスチナ女性と子どもの支援事業」を展開。同地域の女性を対象とした研修や子供の栄養改善プログラムを行っている(写真提供・JVC)

一方で、貧困や差別の根本的な解消のためには、生活物資の支援と共に、国や民族、宗教の違いを尊重し、信頼が醸成される社会に寄与できる人を育てることも重要との観点から、「教育・人材育成」も重点分野に挙げられた。このうち、社会を安定化して地域に貢献する人材の育成を目的に、レバノンに住むパレスチナ難民の看護学生に奨学金を給付するパレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の事業を支援。このほか、「親子で取り組むゆめポッケ」(令和4年度に収集された分の輸送と配付)や「フィリピン・バターン青少年人材育成事業」「カンボジア仏教研究復興支援事業」「国内難民支援事業」など8事業に4514万円が予算化された。

さらに、大規模災害や紛争による被害に備え、「緊急救援・復興支援」の分野には6750万円の予算を計上。国内外の災害発生時には救援活動に当たるパートナー団体などに助成するほか、東日本大震災の復興に尽くす福島県のNPO法人などにも協力する。

「海外教会・拠点一食プロジェクト」の一環として、バングラデシュの住民に医療支援事業が行われた(写真提供・同教会)

このほか、「保健・医療・福祉」の分野では、聖エジディオ共同体(カトリック在家運動体=本部・ローマ)と実施する「アフリカ・HIV/エイズ事業、出生登録事業」や、韓国残留日本人女性を保護する慶州ナザレ園の活動を支援する。

本会の教会が地域の諸課題解決に取り組む団体を主体的に支援する「一食地域貢献プロジェクト」「海外教会・拠点一食プロジェクト」にも、浄財が役立てられる予定だ。

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