光祥次代会長がモルドバ訪問 ウクライナ難民の現状を視察

首都キシナウ市内にある近代美術館で「平和に向けた連帯」のための対話が行われ、諸宗教者による対話の中で光祥次代会長もスピーチを行った

ロシア軍によるウクライナ侵攻が続く1月末、立正佼成会の庭野光祥次代会長はウクライナ隣国のモルドバを訪問した。

モルドバは長引く経済不況で失業率が高く、欧州最貧国ともいわれている。日本の九州ほどの小国だが、ウクライナへの侵攻以降、68万人以上のウクライナ難民を受け入れ、現在も10万人以上が避難生活を送る。モルドバ政府と国民は、自国が直面する物価やエネルギー価格の高騰、インフレなどの課題がありながらも、難民に対し教育や労働環境を整えるなど支援を続けている。

NGOなどの組織や施設が少ないため、宗教団体が個々に活動し、また、市民が自宅を開放してホームステイのような形で難民を受け入れてきた。こうした状況を踏まえ、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)をはじめ、民間企業やNGOを含む国際社会の力を同国に結集。UNHCRと同国政府が協力し、昨年3月に難民調整フォーラムを設立した。

UNHCRとパートナーシップを結ぶ世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)国際委員会も、資金提供などを通して活動をサポートしてきた。今回、ウクライナ難民の現状を視察するとともに、支援を続けるモルドバの宗教関係者らとの対話を行うため、同国際委とUNHCRが設立した「諸宗教指導者評議会」のメンバーが同国を訪問。同国際委共同議長で評議会メンバーの光祥次代会長も参加した。

1月30日、光祥次代会長らメンバー一行は、ウクライナとの国境付近のカウセニ地区にある聖マリア・マルタ修道院を訪問。同修道院は紛争開始当初から、モルドバに逃れてきたウクライナ難民に一日3食の食事と住居を提供してきた。一行は修道院のスタッフから支援状況や難民との交流の様子などを聞いた。

「平和に向けた連帯」のための対話 光祥次代会長がスピーチ

翌31日には、首都キシナウ市内にある近代美術館で「平和に向けた連帯」のための対話が行われ、評議会メンバーをはじめ、地元の宗教コミュニティーや支援団体の代表者、ウクライナ難民らが集まった。対話では、モルドバUNHCR代表のフランチェスカ・ボネリ氏の歓迎スピーチに続き、ウクライナ難民を代表してドミトリー・レカルテフ氏が発表。着の身着のまま逃れてきた当時の状況を振り返り、モルドバの人々の手厚い支援に対し感謝を語った。

次いで、WCRP/RfP国際委のアッザ・カラム事務総長の進行で、諸宗教者による対話が行われ、評議会メンバーや地元の宗教指導者が「平和と連帯」について発言。光祥次代会長もスピーチを行い、モルドバの政府や地域社会の人々がウクライナ難民を受け入れ、宗教団体や国連機関がつながり、全ての人が互いを思いやり活動している姿を、全世界にとって「大きな希望の光」だと語った。その上で、紛争が長期化し、受け入れ側も難民の人々も「疲れてしまうこともあるかもしれない」と憂慮を吐露。「その時に私たちが、世界中の宗教者が、皆さんの存在を忘れずに、具体的な支援につなげていくことが大切」と訴えた。

続いて市民社会の代表らが発言。同じテーブルに着く世界の宗教者に対し、「こんなにたくさんの仲間がいたのだと気づいた」「目の前の困っている人を助けることが、世界にとって大きな影響を与えることを知った」と喜びを語った。

対話を終えた後も、ウクライナ難民(写真右)に寄り添い、訴えに耳を傾ける光祥次代会長とUNHCRのジリアン・トリッグス高等弁務官補

同日、ユダヤ教の施設を訪問しウクライナ難民支援の状況を視察した後、ウクライナからの難民を受け入れるために設立された共同事業体のコミュニティーセンター151を見学。同センターでは難民を対象に語学講座などさまざまなサービスを提供するほか、難民の雇用も進めている。同センターでは、支援状況の視察のほか、モルドバUNHCRへの支援金贈呈も行われ、同国際委共同議長のエマニュエル・アダマキス府主教(トルコ・カルケドン長老府主教)と光祥次代会長が目録を手渡した。

2日間のミッションを終えた光祥次代会長は、「ウクライナ危機という悲しい事実はありますが、孤独を抱えたモルドバの皆さんが集うことで、この地域に宗教協力の芽が生まれる瞬間を目撃させて頂き、とてもうれしく感じました」と語った。