「宗教施設への攻撃を非難するローマ教皇と国内の諸宗教指導者」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)
慈しみの心を全ての生命に――教皇がカンボジア仏教使節団と面会
ローマ教皇フランシスコは1月19日、バチカンでカンボジアの仏教使節団と面会し、「環境問題についての改心」に関して、仏教・キリスト教間の対話の重要性を強調するスピーチを行った。この中で、教皇は、「諸宗教間協力を推進する宗教指導者たちのイニシアチブは、一般社会にとっても重要な要素であり、人間が互いに和解し、自然とも調和し、兄弟姉妹として生きることを可能とする」と述べた。
そして、「人類家族と私たちの地球が重大な脅威に直面している」と伝え、カンボジアの仏教使節団が今回のバチカンでの対話テーマに「環境問題についての改心」を選んだことを称賛。カンボジア仏教が「自身の宗教信仰と霊性伝統からインスピレーションを受け、数十年にわたった社会的、政治的危機を経て、あなたたちの尊い国家に対して、社会的治癒と経済的再建の道程を示すことができる」と奨励した。
この視点から、教皇は「あらゆるレベルでの対話を通して、人類家族と自然との間に、基本的な相互依存の尊重を基盤とする包括的な解決策を見いだすことが緊急の課題だ」と訴えた。だが、この解決策は「人間の心、ビジョン、習慣の変革なくして実現できない」と強調。「環境問題についての改心」は、「現在の環境危機が人間の業によって起きていることを認知」しなければ始まらず、「真の改心」が、「創造(自然)を傷つけ尊重しない傾向やイデオロギー、行動を停止」させ、「貪欲、金融利益の過度な追求、隣人との連帯や環境に対する尊重の欠如などでもたらされた傷痕を治療することができる」と述べた。
さらに、「環境問題についての改心」の目指すところは、「世界で起こっている問題を、自らの苦しみとして受け取る」ことだと戒めた。環境破壊という人間の業で苦しむ隣人(貧者)や自然の苦しみを自身のものとして受けとめ、共有していくことが、環境保全に向けた改心の出発点なのだ。
教皇は、「仏教、キリスト教間の対話は、環境保全に対する責任感を涵養(かんよう)し、それぞれの宗教伝統の持つ深い豊かさを明らかにする」と主張。上座部仏教の経典『慈経』の8番〈慈しみの心を一切世間(全ての生命)に対して、限りなく育ててください。上に、下に、横(周り)に「棲(す)む如何(いか)なる生命に対して」も、わだかまりのない、怨(うら)みのない、敵意のない心を育ててください〉を引用し、「質素な生活を通して、仏教徒たちは、われわれの家(地球)を含めたあらゆる生命体に対して慈悲の心を育てている」とコメントした。仏教徒の培う、あらゆる生命体に対する無量の慈悲心が、キリスト教の神の愛による創造と、その創造の賛美にもつながっていくからだ。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)