終戦から77年 大聖堂で「戦争犠牲者慰霊・平和祈願の日」式典 (動画あり)
第二次世界大戦の終結から77年を迎えた8月15日、立正佼成会の「戦争犠牲者慰霊・平和祈願の日」式典が東京・杉並区の大聖堂で行われた。新型コロナウイルス流行の影響で会員は参集せず、インターネットでライブ配信(会員限定)された式典の模様を視聴し、全ての戦争犠牲者の冥福と世界の恒久平和を祈念した。当日、法話に立った庭野日鑛会長は、釈尊の誕生偈(たんじょうげ)である「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」の意味に触れ、「人間は一人ひとりが皆、尊厳なる存在である」ことを踏まえて精進する大切さを述べた。
一人ひとりが平和を築いていく努力を――庭野会長が法話
式典では、戦争犠牲者に思いを馳(は)せ、平和をかみしめる映像「平和への誓い」が配信された。続いて読経供養が行われ、導師をつとめた庭野光祥次代会長が庭野会長の「回向文」を奏上し、焼香と献鶴を行った。
次いで、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会の篠原祥哲事務局長が体験説法に立った。篠原事務局長は学生時代に信仰に目覚め、入職後は青年布教員として広島教会で人材育成や平和教育に携わる一方で、東京と広島の遠距離生活が原因で離婚した元妻に対する自責の念に苦しんだことを吐露。前隆士教会長(当時)の助言を受けて苦を糧に修行したことで、自らの中に世界の平和を乱す元凶があると気づき、全ての人の苦しみに寄り添って生きる決意ができたと述べた。
平成17年にWCRP/RfP日本委員会に出向。当時の理事長だったカトリック教会の白柳誠一枢機卿から、最も大変な状況にある人から学ぶために、こちらから会いに行くことが宗教者の役割と教わったと披歴した。その言葉を胸に平和活動に臨む中、今年5月には、戦争が続くウクライナの避難民調査で周辺国に滞在したことを述懐。避難民を懸命に支援する現地の人々が苦悩を分かち合おうとする菩薩に見えたと述べ、こうした菩薩のネットワークの強化が世界で最も求められていることだと気づいた体験を伝えた。
現在は、現地での学びを生かして「ウクライナ難民人道支援ボランティア」をポーランドで展開していると話し、今後も世界平和のために精進することを誓った。
この後、庭野会長が焼香と献鶴を行い、法話を述べた。庭野会長は、昭和20年8月15日を振り返り、小学校で聞いた玉音放送(終戦の詔勅=しょうちょく)に言及。「以テ萬世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲ス」という一節に込められた昭和天皇の願いを受けとめ、日本国民の一人として、真剣になって平和実現に取り組むことが大切と語った。
また、釈尊が誕生時に唱えたとされる「天上天下唯我独尊」の言葉を挙げ、全ての人が尊いいのちを頂いてこの世に生まれたとの意味が込められていると説明。釈尊成道時の「奇なるかな。奇なるかな。一切衆生ことごとくみな、如来の智慧(ちえ)、徳相を具有す。ただ妄想・執着あるを以(もっ)ての故に証得せず」という言葉には、生物や無生物をも包含する全ての存在が仏と同じ心を持っていること、妄想や執着に惑わされずに本当の自分に気づいてほしいとの釈尊の願いが込められていることを示し、「こうした言葉を仏教徒として踏まえて、『万世の太平』のために日本人として精進をさせて頂くことが大事」と述べた。
さらに、日々の読経供養で唱える「普回向」の「願わくは此(こ)の功徳を以て 普(あまね)く一切に及ぼし 我等(われら)と衆生と 皆共に佛道を成(じょう)ぜん」に触れ、功徳を世のために回し向け、全ての衆生と共に成仏したいとの願いは菩薩の精神を最も簡明に表していると言明。宮沢賢治の「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」との言葉にも通じると話し、「普回向のように布教することによって、みんなが仲良くしていく、そういう永遠の平和を築いていく努力をさせて頂くことが大切」と語った。
最後に、良寛和尚の「世の中に 何が苦しと 人問はば 御法(みのり)を知らぬ 人と答へよ」の言葉を引用し、法華経が慈悲と智慧の教えである仏教の道理を示すことから、法を知らないことで他国との戦争さえも引き起こされると教示。多くの人に法華経を知ってもらえる自分になるよう心を込めて読経供養することが、健やかな体と、人と争うことのない康(やす)き心の維持につながるとし、「皆さんと共に、これからもそうした心をしっかりと持って精進をさせて頂きたい」と述べた。