第39回庭野平和賞贈呈式 マイケル・ラプスレー師記念講演全文
私たちは「記憶の癒し」の活動を、過去20年にわたり世界中で進めてきましたが、その活動には二つの共通テーマがあります。「ジェンダーに基づく暴力」と「幼少期のトラウマ」です。
ジェンダーに基づく暴力は、人類の歴史に残された最古の傷ではないでしょうか。私たちが身を置く宗教界は、社会の主流よりも男性優位の傾向が強いのが現状です。文化、伝統、宗教の名のもとに女性を抑圧しながら、私たち男性は往々にしてその事実をごまかそうとしてきました。
記憶の癒し研究所では、「ハンズ・オブ・メン」というメディア・キャンペーンを行っています。男性の加害者としての側面と、暴力の抑止力としての側面の両方に焦点を当てたものです。「男らしさ」の概念は時に毒を持ち、そのため男性は自分の弱さを認めたり、自分の傷を気にしたりすることができないのです。
宗教界の組織の多くは人間の性に関する問題でつまずいた経験を持ち、この問題に対して最も抑圧的な姿勢を貫いてきました。そのため、性的マイノリティー(少数者)の人々に深い傷を負わせる結果になりました。性的志向の多様性は遺伝に関する事柄だというのが、現代の科学的な見地であり、選んで決められるものではありません。
私の長年の夢は、あらゆる主要宗教の指導者たちがLGBTQIA+(多様な性)の人々に対して、これまで抑圧に加担してきたことを公式に謝罪する姿を見ることです。
今回の受賞の発表では、南アフリカに「キューバの友人協会」を設立した私の役割について具体的な言及がありました。キューバは60年以上にわたり、米国による違法かつ非倫理的な封鎖政策のもとにありながら、人々の連帯の意味を世界に示しました。とりわけアジア、アフリカ、ラテンアメリカの最貧国です。キューバにとって「全ての人への良質な医療の提供」はスローガンではなく、現実の姿です。新型コロナウイルスの世界的流行に対し、大量破壊兵器は全く無力であり、闘いのヒーローとなったのは医師や看護師でした。キューバのヘンリー・リーヴス旅団は南アフリカなどの国々で、またイタリアのような裕福な国々でも、数え切れないほど多くの命を救ったのです。
アパルトヘイトとの絶え間ない闘いの中、その最前線に掲げた目標のひとつが死刑制度の廃止でした。かつてプレトリア(南アフリカ)では毎週木曜日の朝、一度に最大7人の死刑が執行され、そのほとんどが黒人や貧しい人々でした。今日、南アフリカでは死刑は廃止されています。私の願いは、世界中の全ての国が命を選択し、死刑を廃止するのを見届けるまで長生きをすることです。そして、庭野平和財団にもこの運動を支援していただけるものと期待しています。