「バルトロメオ一世がサウジアラビアを訪問」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

アゾフ連隊兵士の妻たちが教皇に救出を嘆願

ロシア軍が全域の制圧を宣言したウクライナ南東部マリウポリでは、ウクライナ政府傘下の戦闘部隊「アゾフ連隊」が町の港湾部にあるアゾフスターリ製鉄所の地下に立てこもっている。そこには、「今日が最後の日となるかもしれない」と言いながら抵抗を続ける1000人以上の兵士たちと、約700人の重傷者を含む負傷者、兵士の家族が残っているという。

同製鉄所の地下に避難していた一般市民の大多数は、困難だった「人道回廊」の開設によって救出された。アゾフ連隊兵士の妻、カテリーナ・プロコペンコさんとユリヤ・フェドシュクさんはこのほど、同隊の兵士500人の妻を代表し、ローマ教皇フランシスコ宛てに「兵士たちの命を救うために尽力してほしい」と記した嘆願書を送付した。教皇から届いた返書の中には、「5月11日にバチカンで行われる一般謁見(えっけん)への招待状」が同封されていた。同日、二人はバチカン広場で執り行われた一般謁見に参列。式典終了後、最前列で教皇と面会して願望を伝えた。

教皇は、「アゾフ連隊の兵士たちを製鉄所から脱出させるために努力してほしい」との嘆願に対して、「彼らのために祈り、可能な限りの努力を約束した」とのことだ。また、二人は、「ウクライナを訪問するのと同時に、ロシアのプーチン大統領に軍を撤退するよう伝えてほしい」とも要請したが、教皇は答えなかったという。

教皇と直接に言葉を交わした二人は、バチカン広場で報道関係者の取材を受け、「アゾフ連隊の兵士、負傷者や家族の全員が生存することを願っている。そのためには、どんな努力も惜しまない」と述べた。

同連隊の妻たちは、兵士である夫がロシア軍への投降後に拷問を受けて殺されるならば戦死する道を選ぶことを知っている。教皇への支援要請は、国際共同体の介入によって兵士たちが第三国に投降して一時的に避難し、最終的にウクライナへ帰還する道を模索したものだ。「食料、水、薬品も尽き、負傷者の治療もできず、毎日、何人も負傷者が死んでいくという恐ろしい状況を私たちは見ていられない」と二人は語った。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)