WCRP日本委 オンラインで「人身取引防止スタディーツアー」 インドネシアの現状学ぶ

ルマ・ハラパン(GMIT)の活動を説明するマンタオン氏。被害者の保護には地域コミュニティーや家族などの連携が重要と語った(「Zoom」の画面)

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会の人身取引防止タスクフォースによる「人身取引防止スタディーツアー~海外編Part2~」が3月26日、オンラインで開催された。テーマは『インドネシアから学ぶ人身取引の現状』。同インドネシア委員会が共催し、国内外の宗教者ら約100人が参加した。

同ツアーは、アジアで深刻な問題となっている人身取引について学び、その防止のための具体的な行動を考えるもの。これまで日本やフィリピンでの事例が取り上げられてきた。

当日は、宍野史生・同タスクフォース責任者(神道扶桑教管長)の開会挨拶に続き、インドネシアで人身取引の問題に取り組む、プロテスタント教会を母体とした団体「ルマ・ハラパン(GMIT)」の活動が映像で紹介された。

この中で、同国では女性の社会的地位が低いことや、十分な教育を受けられない女性や子供が少なくないこと、貧困層が多いことなどを示し、こうした社会状況が人身取引を生み出す大きな要因になっていると指摘。その上で、同団体では2018年から、被害者の心をケアするカウンセリングや、被害届の提出といった法的手続きの支援などを行っており、これまで29人を支援したとの報告がなされた。また、病気や労災、自殺、雇用主からの暴力などで亡くなった出稼ぎ労働者の遺体を引き取り、故郷に送り届ける取り組みも紹介された。

次いで、人身取引の被害に遭ったインドネシアの20代女性の証言映像が配信された。女性は小学校を卒業後、出稼ぎ労働をあっせんする仲介人の勧誘でマレーシアに行き、9年間、無給で家事労働に従事させられた被害を詳述。外部とのつながりを絶たれ、雇用主からの暴力や脅しにおびえ続けたが、ようやく新たに雇われた家政婦に相談でき、大使館や警察に助けを求めて救出された経緯を語った。

また、帰国後、女性をマレーシアに送った仲介人の家族からさらなる脅迫と詐欺行為に遭い、パスポートや預金通帳を奪われたことを告白。被害届を出したことで仲介人とその家族は実刑を受け、女性は昨年11月に同団体に保護され、現在、社会復帰に向けたプログラムを受けていると語った。

続いて、同団体の支援者で弁護士のマンタオン氏がオンラインでインタビューに答えた。マンタオン氏は、人身取引の予防と啓発、被害者の保護について、諸宗教ネットワークや行政機関と連携して女性や子供に人身取引の状況を伝え、犯罪に巻き込まれないように努めていると説明。また、救出された被害者が家族の元に戻り、安心して暮らせるよう、地域コミュニティーや聖職者、家族が連携して被害者の保護やケアに当たっていると語った。

この後、視聴者との質疑応答が行われた。