「世界の軍事費の均衡ある削減を」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

世界の軍事費の均衡ある削減を

ローマ教皇フランシスコは12月12日、バチカン広場で行われた正午の祈りの席上、ロシアが国境地帯に軍を集結させて急速に緊張の高まっているウクライナ情勢に言及し、「ウクライナとその周辺での緊張が、武器ではなく、国際的な交渉によって解決されるように願う」と訴えた。さらに、「武器の生産が昨年よりも増加という最近の統計を読み、苦痛を感じている」と述べ、「武器は、(平和への)道ではない」と唱えて現状を非難した。

スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、2020年の世界における軍事費の総額が、前年比で2.6%増え、1兆9810億ドル(217兆円)に上り、過去最高を記録したと明かした。1989年の冷戦終結後は、世界平和が促進されていくと信じられていたが、今年の総軍事費は90年のドイツ統一時点より40%増加したことになるという。

50人を超えるノーベル賞受賞者はこのほど、軍拡競争が続く状況に憂慮の念を示し、世界各国が軍事費を削減していくように訴える共同声明文を公表した。12月14日、イタリアではANSA通信が報じた。日本からは、天野博さん(2014年、物理学賞)と梶田隆章さん(15年、同賞)が署名している。

ノーベル賞受賞者たちは声明文で、世界の軍事費が2兆ドルに迫っている要因は、各国が武装を強化し合う悪循環にあると指摘し、軍拡競争の結果は「死と破壊」と訴えた。この状況に対処するため、国連全加盟国の政府が、5年間にわたり軍事費を毎年2%削減するための交渉を開始することを提言。実現すれば、「敵対国の軍事費削減により、自国の安全保障が強化され、抑止力と均衡が保たれる」という。

軍事費の削減による膨大な資金の半分を、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)、地球温暖化、世界的な経済格差といった人類が直面する諸問題の解決に向ける「世界レベルでの配当」に使用し、残りを「各国政府に委託する」とも提案。「人類が直面している重要問題は、(世界レベルでの)協力によってのみ対処できる」と主張し、「戦争しないで、協力しよう」と呼びかけた。

バチカン国連欧州本部常駐代表部のジョン・プッツァー神父は、スイス・ジュネーブで12月13日から17日まで開催された国連特定通常兵器使用禁止制限条約の改正会議でスピーチした。この中で、同ウイルスのパンデミックによる社会的、経済的な危機、世界レベルで悪化している気候変動に対処しなければならない状況にありながら、貧困、不平等、不公正の蔓延(まんえん)、教育や医療の不足といった諸問題に対応する費用を削減し、軍事費が増加されている現状を非難し、人道上の観点から改善を訴えた。

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