コロナ禍で工夫して営まれる彼岸会、年回供養 いのちの尊さをかみしめ

三鷹教会は昨年から教会での式典を映像で配信。今回も、多くの会員が映像の視聴を通して式典に参加した(写真・同教会提供)

秋の彼岸を迎え、9月23日の秋分の日を中心に立正佼成会の各教会で「彼岸会」が行われた。新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、昨年から会員が参集するのを避けて、オンライン配信などさまざまな形で春秋の彼岸会が催されている。また、故人を偲(しの)んで追善供養を捧げる「年回供養」も、感染対策を取りながら実施されている。

彼岸会は、迷いと苦しみに満ちた「此岸」を離れ、悟りの世界である「彼岸」に至るため六波羅蜜(ろくはらみつ=波羅蜜は「到彼岸」の意)の実践の誓願を新たにするもの。先祖から受け継がれてきたいのちに感謝し、菩薩行の実践が先祖への真の回向供養であると自覚して、日々の精進を決定(けつじょう)する機会でもある。

三鷹教会は9月18日、教会道場で「秋季彼岸会」を開催した。コロナ禍で教会参拝が制限される中、映像の視聴を通して式典に参加してもらおうと、当日の様子を動画共有サイトで会員に配信した。

式典では、矢部和子教会長を導師に読経供養が行われ、教会と各家庭で戒名が読み上げられた。体験説法を行った主任(50代女性)は、病気を患った姪(めい)に寄り添い、つらい思いに耳を傾けながら、共にいのちの尊さをかみしめた体験を語るとともに、病を通して姪が母親と心を通わせ、親子で精進できるようになった喜びを発表した。

あいさつに立った矢部教会長は、「彼岸は遠い所ではなく、私たちが人さまのために身を使わせて頂く菩薩行の中にあります。その布施の功徳が先祖に回向され、自分自身の幸せにもつながるのです」と述べた。

昨年から教会での式典の映像配信を担当する文書布教責任者(50代男性)は、「コロナ禍で教会に参拝できない方々に、映像を通して少しでも教会の雰囲気や教えをお伝えしていきたい」と願いを語る。

墨田教会は同20日、教会での式典の様子を動画共有サイトで配信すると同時に、ウェブ会議システムを利用して各家庭で読経供養を行う会員たちの表情を紹介。サンガ(教えの仲間)が一体感を深められるように工夫を凝らした。

このほか、杉並、品川、立川、甲府、名古屋、中津川など多くの教会が式典の動画配信を行った。

支部や地区単位で彼岸会を実施した教会もある。旭川教会では各支部が事前に日時を決め、その時刻に会員たちが心を合わせて自宅で読経供養を行った。札幌北教会では、支部ごとに教会道場で支部長、主任などが中心となって式典を開催。各家庭でも読経供養が行われた。

渋谷教会では、地区ごとに会員たちがウェブ会議システムやSNSのビデオ通話機能などを使ってつながり、式典を実施。同じ時間に参加できない会員には主任などがオンラインで個別に対応し、一緒に読経供養を行った。

全国の各家庭でも彼岸会が行われ、家族で真心を込めて読経供養を行い、先祖への感謝を深め、菩薩行の実践を誓った。

「密」を避け、心通わせ

一方、各家の「年回供養」も「密」を避け、当家に会員が極力集まらない形で実施されている。

自宅で彼岸会の読経供養を行う旭川教会の会員(本人提供)

新宿教会は、ウェブ会議システムやSNSのビデオ通話機能などを活用して当家と導師などの「お役者」をつなぎ、年回供養を行っている。事前に支部長や主任が電話などで当家から聞き取りを行い、故人を偲ぶ回向文を作成。読経供養の際に読み上げて故人の思い出を分かち合い、生前の徳を賛嘆している。

このほか、厚木、上田教会などでもオンラインでの追善供養と、かみしめ法座を行っている。地区や支部を超えて多くの会員が参加。遠方の会員や親類も参加しやすく、故人の生前の写真を画面上で紹介できるなど、オンラインの利点を生かしている。

文京、港、熱海教会など多くの教会では、当家の「教師」資格者が導師を務め、家族で年回供養を実施。サンガも同時刻に読経供養を行い、故人への回向を捧げている。

板橋教会では、教会道場で読経供養を行い、その動画を当家や支部・地区の会員、親類などに配信している。