「9月11日は破壊と死の暗黒日――米国のカトリック司教会議」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

教皇は、訪問中のハンガリーで、ヤーノシュ大統領、オルバン首相と懇談した(バチカンメディア提供)

憎悪ではなく友愛を訴える――教皇のハンガリー訪問

カトリック教会による国際聖体大会の最終日でミサを司式するためハンガリーの首都ブダペストを訪問中のローマ教皇フランシスコは9月12日、同国のアーデル・ヤーノシュ大統領、オルバン・ビクトル首相と懇談した。

その後、キリスト教諸教会とユダヤ教の指導者たちと面会し、スピーチした。この中で教皇は、欧州などの地域で今も蔓延(まんえん)する反ユダヤ主義に言及。両宗教の指導者たちに向けて、「共に友愛教育を推進することによって、友愛を破壊しようと台頭してくる憎悪に打ち勝とう」と呼びかけた。

さらに、ユダヤ教、キリスト教、イスラームに共通する祖師であるアブラハムを「私たちの父」と呼び、その精神に沿い、キリスト教徒とユダヤ教徒が、「過去の分裂の壁を打ち破り、互いを部外者ではなく友人と、敵ではなく兄弟として見ようとしている」と評価。同国の首都は、ドナウ川を挟んだ西岸のブダ、東岸のペストが“鎖橋”でつながれながらも、「融合させられるのではなく、(独立後も)結び付けられている」という例を紹介し、キリスト教徒とユダヤ教徒の関係も同じようでなければならないと主張した。

握手をする教皇とオルバン首相(バチカンメディア提供)

また、両宗教の歴史を振り返り、「他者を(自身に)吸収しようと試みるたびに、構築ではなく破壊が、同化ではなく隔離(ゲットー)が行われてきた」と説明。「こうしたこと(ユダヤ人の迫害)が繰り返されないよう意識を高く持ち続け、祈らなければならない」と訴えた。

教皇のハンガリー滞在は同大会の閉会ミサを司式するわずか数時間だったが、国際世論は今回の訪問前から同国で自国至上主義を掲げて欧州委員会と対立し、難民や移民の受け入れを拒否するなど強権的な政権運営をするオルバン首相と、教皇が面会するかに注目していた。バチカンの声明文は同日、教皇がヤーノシュ大統領、オルバン首相と「友好的な雰囲気の中で懇談した」と明らかにした。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)