令和3年次「壮年(ダーナ)総会」 人の幸せ念じ、人のために働く壮年めざし 奥田知志氏(NPO法人「抱樸」理事長)が講演

昨年に続き、オンラインで開催された「壮年総会」。講演やパネルディスカッションなどが行われ、その映像が配信された

『私がとなりにいる。私のとなりにいる。~違いは豊かさ。ニュー方便時代がやってきた~』をテーマに6月20日、立正佼成会の令和3年次「壮年(ダーナ)総会」が大聖堂(東京・杉並区)を拠点にオンラインで開催された。総会では、壮年部員2人による体験説法の後、NPO法人「抱樸(ほうぼく)」理事長で、日本バプテスト連盟東八幡キリスト教会牧師の奥田知志氏が講演した。総会の模様は、全国の壮年部員に向けてインターネットで限定配信された。

総会の冒頭、東日本大震災から10年を迎えて東北支教区からの映像メッセージが配信された。映像では、全国のサンガ(教えの仲間)の励ましや支えに応えて、これまで歩んできた会員の様子や、「絆」を大切に活動に取り組む壮年部員たちの姿が紹介された。

続いて、全国の壮年部員代表2人の体験説法が上映された。

このうち、春日部教会の壮年部員(73)は、結婚5年目で妻を亡くした後、長男が妻の実家で過ごすことが多くなり、すれ違いの生活が続いて、やがて長男とささいなことで口論するようになった経緯を述懐。長男が結婚して独立した後も親子関係の葛藤を抱えていたが、新型コロナウイルス感染症の流行後、壮年部員を心配した長男が家を訪れ、会話する機会が増え、わだかまりが解けた喜びを語った。

その上で、コロナ禍で教会参拝が制限される今、サンガをはじめ、これまで支えてくれた多くの人に感謝を深めながら、身近な人に寄り添っていきたいと述べた。

富山教会の壮年部員(62)は、小学生の頃から父親が病気で働けず、貧しい暮らしの中、悔しく、惨めな気持ちで過ごした心情を吐露。高校生の時に練成会に参加して、初めて自分の思いを吐き出し、仲間に温かく寄り添ってもらえたことが人生の転機になったと語った。

また、その後に教会活動に参加するようになり、妻に先立たれて大きな悲しみも体験したが、現在はオンラインによる法座や勉強会を通して、壮年部の仲間と学びを深めていると発表。今後も教えを人生の基盤にして、一層、菩薩行に励むと誓った。

この後、30年以上にわたりホームレスや困窮者の支援活動にあたる奥田氏が講演に立った。奥田氏は、苦しんでいる人を「一人にしない」という思いを活動の根底に置いていると説明。団体名の「抱樸」には「原木や荒木をそのまま抱き取る」という意味があり、そのように、社会で苦しんでいる人を丸ごと受けとめ、その「原木」がいつか立派な働きをすると信じて活動に取り組んでいると述べた。

講演者の奥田氏。パネルディスカッションのパネリストも務めた

また、原木や荒木をそのまま抱きしめると体に傷がつくように、人との出会いは多少なりとも「傷」を伴うとして、「その痛みが生きている実感であり、人と共に生きている証拠になる」と語った。

さらに、現代社会の孤独や孤立の問題を解説し、「ハウスレス」と「ホームレス」の違いに言及。これまでの経験上、路上生活者が「家」(ハウス)に住めたとしても、心配してくれる「人」(ホーム)がそばにいないと、問題の根本的な解決には至らないとして、ハウス(家)とホーム(人)の両方を満たすことを活動の基本にしていると明かした。

その上で、同団体が毎週行っている生活困窮者への炊き出しに触れ、弁当という「物」に「人」が関わることで、そこに「物語」が生まれると強調。その「物語」によって相手に生きる意欲を起こさせるのが本質的な支援ではないかと述べ、そうした人の「縁(えにし)」を広げていくことが大事と語った。

加えて、家庭内での子供の虐待や、親が子供の世話を十分にしない問題にも触れ、自分が親からしてもらっていないことは、子供にもしてあげられないとの見解を明示。「愛は引き継がれる」「愛された人が愛する人になれる」という言葉を紹介し、家族内で親から子へと愛情を「相続」できない場合は、周囲の人が愛情を注ぎ、社会全体で愛情を「相続」していく必要があると訴えた。

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