教皇がカナダ先住民の子供たちの遺骨発見に言及(海外通信・バチカン支局)

カナダの「真実と和解委員会」は2015年、先住民の子供たちが寄宿学校で暴力、栄養不足、性的暴行などの被害を受け、少なくとも4000人が病気や(教師たちの)注意不足による事故、暴行で死亡したというリポートを公表した。今年5月には、同国西部バンクーバーから250キロ北東にあるカムループスの寄宿学校跡で、記録されていない215人の子供の遺骨が発見され、カナダ国民に強いショックを与えている。

同国では、1867年の建国前(英領)の1831年から1996年まで、15万人を超える先住民の子供たちが親元から強制的に引き離され、約130の寄宿学校に入れられた。西洋社会への同化を強制する政策だった。多くの寄宿学校の運営は、同国政府の主導によりカトリック教会に委託されていた。

同国のカトリック司教会議は5月31日、今回の悲報を受けて声明文を公表した。この中で、「カナダの司教たちは、過去の痛みと苦をより明確に知ることとなり、先住民と共に現在を歩み続け、未来に向けて、より大きな癒やしと和解を探し求めていくことを誓う」と伝えた。国連欧州本部で人権問題を担当する専門家たちも6月4日、カナダ政府とカトリック教会に対して「迅速で包括的な調査」を求めた。

ローマ教皇フランシスコは6月6日、バチカン広場での正午の祈りの席上でスピーチを行い、「カムループスで発見された215人の子供たちの遺骨という衝撃的なニュース」としてこの問題に言及した。「この悲しき発見が、過去の痛みと苦に対する意識をより強くする」と心情を述べた。

さらに、「カナダの権威ある政治・宗教指導者が、この悲しき事件の真相を解明するために協力し、和解と癒やしへの道を謙虚に歩んでいくように」と要請。「植民地主義の形態や、イデオロギー的植民地主義の道から遠ざかり、対話、相互尊重、そして、カナダの全国民の権利と文化的価値を認知する道を共に歩むように願う」と語りかけた。

また、同日に西アフリカのブルキナファソ北部の村で発生したイスラーム過激派組織による襲撃事件に言及。138人の死者の冥福を祈ると同時に、遺族への連帯を表明した。

カナダのカトリック司教会議のリチャード・ギャニオン議長(ウィニペグ大司教)は6月11日、同国のカトリック教会と先住民の指導者たちが今秋にバチカンを訪問し、教皇と懇談する予定であると明かした。先住民寄宿学校で教育を受けた生存者も同行し、教皇と会談する予定だ。

世界教会協議会(WCC)のイオアン・サウカ暫定総幹事も声明文を発表。「先住民の子供たちが、このような形で亡くなったのは恐ろしいことであり、彼らの死を悼むだけでなく、(こうした悲劇が)世界で再び起こることを許してはならない」と訴えた。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)