本会が『入管法改正案の取り下げを受けて』と題するメッセージ発表
立正佼成会は6月1日、『入管法改正案の取り下げを受けて』と題するメッセージを発表し、本会ウェブサイトに掲載した。メッセージは、政府与党が5月18日、「出入国管理及び難民認定法」(入管法)改正案の成立を断念したことを受けてのもの。6月20日の「世界難民の日」を前に、難民が置かれた現状を多くの人と共に考えていきたいとの願いも込められている。メッセージでは、今回の政府の方針に歓迎の意を表明。難民の保護や救済が進むことを願い、本会としても取り組みを進める決意を表した。
日本は1981年に難民条約に加入し、難民を保護してきた。しかし、その受け入れは少数で、一昨年は、難民認定申請者1万375人に対して認定者は44人。認定率は0.4%だった。認定NPO法人難民支援協会によると、米国の29.6%、英国の46.2%、ドイツの25.9%などと比べ、日本は極端に低い水準にある。新型コロナウイルスの感染拡大で入国制限が実施された昨年は申請者が大幅に減り、出入国在留管理庁の発表によると申請者は3936人で、認定者は47人、認定率は1.2%だった。
こうした現状により、認定を求める外国人は申請を繰り返さざるを得ず、認定率の低さが入管施設での長期収容の一因になっているといわれてきた。認定率の低さには国連からも懸念が示されていた。
このような中、今年2月、「難民認定手続き中の外国人でも、申請回数が3回目以上であれば強制送還できる」「退去命令に応じない外国人に刑事罰を科す」といった在留管理を厳格化する同法改正案が、政府与党から国会に提出された。
一方、難民条約には、「難民を彼らの生命や自由が脅威にさらされるおそれのある国へ強制的に追放したり、帰還させてはいけない」(33条)、「庇護申請国へ不法入国しまた不法にいることを理由として、難民を罰してはいけない」(31条)と定められている。改正案の提出について政府は、オーバーステイなどの外国人が入管施設に長期収容されている状況を解消するためと説明していたが、人道上の観点から大きな問題があるとの指摘が上がっていた。国連の人権専門家らも、「国際的な水準を複数の点で満たしていない」と報告していた。
改正案の審議が国内外で注目される中、政府与党は5月18日、今国会での採決を見送る方針を決めた。今年の秋までに衆議院が解散となるため、法案は廃案となる。
難民の保護、救済がより一層進むことを願って
これを受けて発表された本会のメッセージでは、「今回の改正案の取り下げを歓迎します。難民の保護を義務づけた国連難民条約の精神に沿って、今後一層、難民の保護や救済が進むことを切に願います」と表明した。
さらに、本会は以前から難民問題に関心を寄せており、1970年代、ベトナム戦争の混乱から本国を脱出した「ボートピープル」が国際問題になった際、本会が難民を受け入れたことを報告。また、「一食(いちじき)を捧げる運動」や「親子で取り組むゆめポッケ」を展開し、諸団体と協力して難民支援に努めてきたことを挙げ、「すべてのいのちは尊く、国や人種、宗教の違いを超えて支え合い、共生していくことが平和への道」であるとの考えを示した。
その上で、難民認定率が低い日本の現状や、長期収容と施設内での待遇の問題に触れ、国籍や在留資格を問わず、すべてのいのちが保護されるように国会で議論が深められることを要望。本会として、難民の心情に寄り添い、すべてのいのちが尊ばれる世界の実現に向けて活動していく決意を表した。
『入管法改正案の取り下げを受けて』