2021年度の「パグウォッシュ公開講座」第1回 核兵器の現状と危険性について学ぶ

核兵器禁止条約発効の意義を説明する田井中氏。核兵器は「絶対悪」との認識を広げていく重要性を語った(「Zoom」の画面)

『核時代における非戦』をテーマに、科学者や市民らが平和への取り組みを考える2021年度の「パグウォッシュ公開講座」(全4回)の第1回が5月28日、オンラインで行われた。日本パグウォッシュ会議、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会、明治学院大学国際平和研究所が共催。宗教者や市民約150人が視聴した。

核兵器の開発や実験、所有などを全面的に禁じる「核兵器禁止条約」が今年1月に発効した。これを受け、今年度の講座では、「平和憲法を擁する戦争被爆国である日本が、今どのような役割を果たすべきなのか」という問題意識に立ち、核廃絶への取り組みについて考えていく。

今回は、『核兵器の現状と危険性――禁止条約発効後の喫緊の課題は何か』と題し、日本や米国で核問題を取材してきた朝日新聞社横浜総局の田井中雅人記者が講演した。

田井中氏は、核兵器禁止条約の前文にある「核兵器の使用による犠牲者と核兵器実験被害者の受け入れがたい苦痛を心に留める」「放射線の、女性や少女への悪影響を認識する」という条文を紹介。核兵器の非人道性が条約に明文化された意義を強調し、「核は『必要悪』でなく『絶対悪』という認識を広げることが大切」と語った。

また、米国では自国の核実験の影響で健康を害したと社会に訴える市民が現れており、核兵器は人間に深刻な被害を与えるもので、禁止しなければならないと声を上げて活動していることを報告。「核大国は被爆大国でもある」と指摘して、核兵器保有国内で自国民から被害が語られている点に大きな意味があると述べた。

さらに、日本が同条約に加盟せず、米国の「核の傘」に依存する現状に言及。「核の傘」は、日本が核不拡散条約(NPT)を批准する代わりに米国から提供されたもので、核兵器の保有を目指していた当時の日本政府の政治的な思惑の上に成立したものと解説した。核廃絶のためには市民がこうした経緯や課題を理解し、為政者に同条約への参加を働きかけることが重要と訴えた。

この後、ウェブサイト「核情報」を主宰する田窪雅文氏が講演に対するコメントを発した。田窪氏は、米国のバイデン政権が検討している「核の先制不使用」の方針に対し、日本政府は近隣諸国の軍事的な脅威の抑止力が低下するとして反対していることに懸念を示した。