「WCCが声明 日本政府に海洋放出の再考求め」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

イスラエル ユダヤ教の行事で大惨事

4月30日未明、イスラエル北部のメロン山でユダヤ教の行事「ラグ・バオメル」で会場の一部が崩れ、逃げようとした巡礼者が殺到して将棋倒しとなる事故が起き、少なくとも45人が死亡した。

燭台(しょくだい)の点灯式、祈り、踊りを中心としたこの宗教行事は、2世紀のユダヤ教神秘主義の祖師として崇敬されるシモン・バル・ヨハイ師(ラビ)の墓前で行われる。同行事は、132年にローマ帝国軍の支配に対するユダヤ人の蜂起を記念するものであり、毎年、10万人から50万人のユダヤ教正統派の指導者や信徒たちが集う。

同国では新型コロナウイルスの感染が拡大している期間、ユダヤ教、キリスト教、イスラームの集団巡礼や行事を禁止した。今年に入り、ワクチンの接種率が高まるにつれ、さまざまな規制が段階的に解除されており、政府は今回、1万人の参加を条件に開催を許可していた。しかし、実際には約10万人が参加したと推定されている。

事故は深夜に参加者たちが踊っていた時に、階段席の一部が崩れ、狭い出入り口に人々が殺到して起きた。将棋倒しによる死者45人、負傷者100人以上。建国以来、宗教行事での最悪の惨事になった。

現地からの報道によると、惨事発生の2時間前に救急部隊が「何か大きな危険が迫っていることを感知」していたとも伝えられる。事故現場を訪れたネタニヤフ首相は、「子供たちを含む、多くの人たちが圧死するという、胸の張り裂けるような出来事が起きた。多くの犠牲者の身元がいまだ確認されていない。国にとって、最悪の惨事の一つとなった」と発言。5月2日を「国民が喪に服す日」とした。

悲報に接した聖地エルサレムのカトリック会議司教はすぐに同国のリブリン大統領に宛て、「犠牲者を悼み、負傷者の回復を祈る」との親書を送付した。欧州議会のサッスーリ議長は同日、「メロン山の巡礼者たちの間で数十人の死者と100人以上の負傷者が出たことに驚愕(きょうがく)している。ユダヤ教共同体が、コロナ禍から立ち上がろうとしていた矢先だったのに」とツイート。欧州連合(EU)の対外行動庁も「EUは犠牲者の家族とイスラエル国家に哀悼の意を表し、負傷者の回復を願う」との声明文を公表した。

世界の約350のプロテスタント諸教会、正教諸教会、英国国教会と聖公会などの合議体である世界教会協議会(WCC)も4月30日、イオアン・サウカ暫定総幹事名の声明文を公表。「喜びが死となり、大きな光が深い暗闇となった」と犠牲者を悼み、「このような筆舌に尽くしがたい悲劇の前で私たちは、犠牲者と負傷者、そして、彼らの家族に対しての連帯を表明し、彼らに思いを馳(は)せ、彼らのために祈る」と心情を表した。

ローマ教皇フランシスコは5月2日、バチカン広場での正午の祈りに機会に、「金曜日にメロン山で45人の死者と多数の負傷者を出した事故に対し、悲しみとともに、イスラエル国民への連帯」を表明し、犠牲者とその家族への祈りを約束した。

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