「新型コロナウイルスワクチンの接種は倫理的義務——教皇」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)
新型コロナウイルスワクチンの接種は倫理的義務——教皇
ローマ教皇フランシスコは1月10日、イタリアの民放テレビ局が放映したインタビュー番組の中で、「全ての人が新型コロナウイルスワクチンを接種すべきだと確信している。これは倫理的な選択である。なぜなら、自身の健康や生命だけではなく、他の人々の生命にも関わる問題だからだ」と述べ、自らも接種の予定であると明かした。さらに、同国内の「ワクチン拒否主義」(NOVAX)を「自殺行為」として批判した。
バチカンのマテオ・ブルーニ広報局長は13日、バチカン医療衛生本部による医療従事者、聖職者、従業員へのワクチン接種が同市国内にある教皇パウロ六世ホールで開始されたと発表。翌14日には、教皇と名誉教皇ベネディクト十六世が1回目の接種を受けたと明らかにした。使用されたワクチンは、米国の製薬会社ファイザーとドイツのビオンテック社が共同開発したものといわれている。
だが、バチカンにおいて、このワクチンの接種に問題がなかったわけではない。新型コロナウイルスワクチンの研究・開発過程で、人工妊娠中絶により生命を失った胎児の繊維が使用された事実が発覚し、中絶に反対する聖職者や信徒たちが、同ワクチンの使用に道徳的な問題があると訴えていたからだ。
バチカン教理省は昨年12月21日、同ワクチンの使用における道徳性について教書を公表した。受精の瞬間に人間の生命が誕生し、中絶は人を殺(あや)める行為との立場を固持する同教理省は、別の方法で感染拡大を抑制できないという重大な危機の場合、同ワクチンの接種を回避する道徳的義務は負わないと説明。同時に、今回のワクチンの接種を「合法的」としながらも、「研究・開発段階で中絶された胎児の繊維が使用されたからといって、中絶そのものを容認するものではない」との見解を示した。
また、「ワクチンの接種は通常、道徳的義務ではなく、自発的なもの」としながらも、現在のように社会全体が危機に直面している場合、「倫理的な観点から、自身の健康を守るとともに、共通善(公共の利益/他の人々の健康)を追求しなければならないのが、ワクチン接種の道徳性である」と主張している。
最後に、「新型コロナウイルスワクチンが開発途上国の国民に負担とならない方法で接種されるように」と表明。そうした人々がワクチン接種を受けられない場合、さらなる困窮に陥り、差別、不正義の中で生きることを余儀なくさせられる、と訴えた。
ブルーニ広報局長は20日、教皇パウロ六世ホールにあるワクチン接種施設で、教皇慈善活動室からの援助を受ける路上生活者25人がワクチンの接種を受けたことを発表。今後も彼らに対する接種を続けていくと明らかにした。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長も、世界の経済大国が特別な責任を負っていると強調した上で、「いくつかの国は必要以上にワクチンを購入している」と問題点を指摘。同ワクチンの供給に対して経済格差が影響を及ぼしており、先進諸国には迅速に供給され、開発途上国には全く届いていない現状の改善を訴えた。
ギリシャの「グリーク・シティー・タイムズ」紙(電子版)は14日、東方正教会コンスタンティノープル・エキュメニカル総主教のバルトロメオ一世が、同ワクチンを接種したことを報道。同師が世界3億人の正教徒にワクチン接種を呼びかけたとも伝えた。