宗教の違いを超えて国家の一致を――マレーシアの諸宗教者(海外通信・バチカン支局)

マレーシア・サラワク州の諸宗教者は9月16日、同州シブでマレーシア連邦成立57周年を記念する「諸宗教者による祈りの集会」を開催した。ローマ教皇庁外国宣教事業部の国際通信社「フィデス」が18日に報じた。

同集会は、「国家の発展、平和、連帯の精神を諸宗教の祈りによって促進していくこと」が目的で、「諸宗教間における一致」と名付けられた、諸宗教コミュニティーの組織によって企画された。8月31日から9月15日までの準備期間にも、キリスト教諸教会、シーク教、バハイ教、ヒンドゥー教、仏教やイスラームなどの宗教施設で、さまざまな集会、異なる宗教者が出会うイベント、記念行事などが催されてきた。

連邦国家の成立を祝うために同国の諸宗教者が協力し、集いに参加したのは初めて。準備期間を通し、「マレーシア憲法、人間生命の尊厳性、国家が歴史の中で受けたさまざまな恩恵」などについて対話を繰り返し、それぞれが内省を深めた。

「諸宗教間における一致」のディレクターであるリチャード・ロン氏は、マレーシアが有する多様な文化や宗教遺産を保存していく誇りを、マレーシア連邦の成立記念日以外でも保持することが重要と強調。一連の取り組みが「寛容と協力の精神を強め、諸宗教に属する人々の理解を深め、異なる信仰や文化的背景を持つ人同士の調和と一致を促進した」と話した。

カトリック信徒として参加したキャサリン・ヌグ氏は、祈りと諸宗教対話は社会に調和をもたらし、協調していくために必要な二つの道と指摘。「マレーシアの成立記念日は皆にとって、相互扶助と国の共通善(公共の利益)を思い起こさせる覚書だった」と述べた。

こうした取り組みには、国や地方自治体の代表者、NGOのメンバー、社会運動の代表者なども参加した。ダトゥク・ハリマー・モハメド・サディク国家統一相は、政府が公表した新型コロナウイルスへの新たな対策の順守を参加者に呼び掛けるとともに、「現在のマレーシアの繁栄は、宗教、民族、文化の違いがありながら、国民が一致の精神を実践したことによる」と発言した。マレーシアの宗教人口は、イスラーム61%、仏教20%、キリスト教9%、ヒンドゥー教6%、儒教と道教1%となっている。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)