ワクチンの開発競争に対し、共通善を説く教皇(海外通信・バチカン支局)

ローマ教皇フランシスコは9月9日、バチカン宮殿のサン・ダマゾ広場で開催された、水曜日恒例の一般謁見(えっけん)で説教した。一般謁見は先週から、同広場を会場に信徒を迎えて開かれている。

席上、教皇は、新型コロナウイルスの世界的流行に対し、「皆が共に共通善(公共の利益)を追求するなら、より良い方法で乗り越えられるが、そうでなければ、一層悪い世界へ転落していく」と述べた。各国が同ウイルスのワクチン開発を競っており、現状について「一方的に利益を追求する動きが浮かび上がっている」との認識を表明。そうした姿勢で開発に臨むのは、「最初にワクチンを開発し、新型コロナウイルスに対する解決策を自身の手中に収めようとしており、経済的、政治的な利益を得るために事態を紛糾させ、分裂をもたらす人々だ」とその行為をいさめた。

また、「他の人々の苦しみに対して何の関心も示さず、自身の道を歩む人々」に対しても言及。無関心な人たちを、『新約聖書』の中でキリストに死刑の判決を下す責任をユダヤ人に転嫁したローマ帝国総督の名を借りて「ポンティオ・ピラトの信奉者だ」と戒めた。

その上で教皇は、感染拡大による社会的、経済的な危機に対するキリスト教の答えは、「先んじて私たちを愛された神の愛である」と強調し、10月3日に公表が予定されている新たな回勅「すべての兄弟たち」の内容の一端に触れた。

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