庭野平和財団オンラインセミナーが終了 4回にわたってコロナ禍で共に支え合う取り組み考える

第3回のセミナーで講演する全日仏の戸松理事長。コロナ禍での宗教者の役割について話した

『新型感染症が与える影響と市民社会』と題する庭野平和財団のオンライン連続セミナー(全4回)の第3回が8月5日に行われ、市民70人が視聴した。また、同7日に実施された第4回には67人が参加した。

第3回は、宗教者の立場から、全日本仏教会(全日仏)の戸松義晴理事長と、キリスト教の精神を基盤とした日本YWCAの西原美香子業務執行理事が講演した。

戸松師は、4月の政府による緊急事態宣言発令後、全日仏では新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために加盟する全国の寺院に、宗教活動の自粛と寺院関係者の感染対策の徹底を呼び掛けたことを説明。多くの寺院は檀信徒の意向を尊重しつつ、葬儀や法要の中止または延期、感染予防策に努めての少人数での実施といった対応を取ったほか、観光目的での訪問を控えてもらうよう市民に告知したことなどを紹介した。

加盟寺院へのアンケート調査の結果も報告。コロナ禍により多くの寺院が収入面で影響を受けた一方、寺院での法要をインターネットを使ってライブ配信することで、遠方在住者や高齢者といった従来は参集が困難だった人も映像を通して法要への参加が可能になり、「新しい生活様式」に合わせた取り組みが生まれていると話した。

また、感染者や医療従事者などへの偏見や誹謗(ひぼう)中傷が起きている問題に触れ、その背景にはウイルス感染への不安から人々の心が乱れ、社会に寛容性がなくなっている現実があると指摘。宗教者には不安を抱える人々の心に寄り添い、安らぎを与える使命があるとした上で、寺院で檀信徒に仏の教えを説くだけでなく、インターネットなどを使って積極的に多くの人に宗教精神を伝え、傾聴活動による救いの手を差し伸べていくことが必要と語った。

日本YWCAの西原氏

続いて西原氏が、日本YWCAのコロナ禍における活動を報告。特別定額給付金の支給にあたり、DV(ドメスティック・バイオレンス)被害などで夫と別居中の女性をはじめ、給付金の受け取りが難しい状況にある人にも確実に届く支給方法を求める要望書を政府に提出したことを伝えた。国内に24拠点ある地域YWCAの活動にも触れ、日本に滞在する外国人留学生への生活資金の提供や、日本語を母語としない子供への学習支援などの取り組みを紹介した。コロナ禍での国内のキリスト教界の動きにも言及し、日本聖公会の信徒である自身の経験を踏まえ、オンラインでの礼拝や、教会での少人数による礼拝などが行われたと述べた。

さらに、今後の社会の課題として、感染者の隔離が本人の孤立や差別意識を招くことがあってはならないと強調。「私たちは感染者のことを、わが子を見守る時のように温かな心で思い続ける必要があります。隔離された人の寂しさが取り除かれるとともに、一刻も早く回復に向かうよう祈りましょう」と参加者に訴え、全ての命を慈しみ続けることが、宗教団体や宗教精神を基にしたNGOの大切な役目であると語った。

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