『祈り』をテーマに 「壮年(ダーナ)総会」開催 日本総研会長の寺島実郎氏が講演 (動画あり)
寺島氏は、新型コロナウイルスが世界的に蔓延(まんえん)する現状に触れ、ウイルスや細菌は人類の誕生以前から生存し、生物界に広く存在することなどを説明し、ウイルスを抑制しつつ共生する大切さを強調。その上で、物事を総体的に考える「全体知」の探求が大事であるとし、その姿勢は仏教の思想にも通じると述べた。
また、近年、日本でクローズアップされている経済格差や貧困の問題を解説しながら、元々あった経済や社会の構造的問題が、今回のコロナ禍により雇用面などで顕著に現れたと語った。
さらに、宗教への関心が低下しているといわれる日本で、仏教者には、自己を深く探求する仏教の原点に立ち返りつつ、同時に、人の救済を目指す大乗仏教的な視点で現代社会の問題に向き合う生き方が求められていると述べた。
続いて、全国から寄せられた「菩薩として温かい触れ合いをする壮年部員のエピソード」が本人の写真とともに紹介された。
この後、寺島氏を囲み、光祥次代会長、実行委員会議長の江東教会壮年部長(56)、教育グループスタッフ2人による討論会が行われた。
この中で寺島氏は、AI(人工知能)時代における宗教の意味、デジタル化に対応できない壮年層へのフォロー、宗教間の調和を図るために仏教が果たす役割などについて自身の見解を述べた。
「お題目修行」に続き、最後に“壮年本部長”の光祥次代会長があいさつした。
光祥次代会長は、アルベール・カミュの小説『ペスト』の中にある“際限なく続く敗北”という言葉を紹介。「私たちは一人でも多くの人の幸せを求めて努力しながら、“際限なく続く敗北”の中で、時々感じられるささやかな幸せや、人の温かさに触れられる喜びによって歩んでいるのかもしれない」と語った。
また、菩薩とは矛盾を抱える力を持つ人と説明し、「今の時代に必要なのは、強い人よりも弱さを見つめられる人、矛盾をそのまま包み込める人なのかもしれません。『あの人に話を聞いてもらいたい』と思ってもらえるようになりたい、そして、人と出会うことにいつも真摯(しんし)で、誠実でありたい――それこそが新たな時代をつくる価値観ではないでしょうか」と述べた。
同日配信された動画投稿サイト「YouTube」の動画(会員限定)は8月31日まで視聴できる。