「新型肺炎患者のために祈るローマ教皇フランシスコ」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

イラクのサレハ大統領がローマ教皇と懇談

イラクのバルハム・サレハ大統領は1月25日、バチカンを訪問し、ローマ教皇フランシスコ、バチカン国務省長官のピエトロ・パロリン枢機卿、同省外務局長(外相)のリチャード・ギャラガー大司教と懇談した。

バチカンが公表した声明文によると、教皇とサレハ大統領は、「イラクの国家主権の尊重と、市民社会の安寧を取り戻すための対話を奨励し、国家の安定と再建のプロセスを推進していく重要性」などについて議論した。具体的には、湾岸戦争やイラク戦争、最近では、首都バグダッドで発生したイラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニ司令官の殺害事件に見られるように、米国とイランとの緊張関係から影響を受け、イラクの国家主権が脅かされていることを確認。さらに、先の二つの戦争による破壊からの国家再建のプロセスは政情不安によって進まず、困窮する市民の抗議運動が激化し、治安部隊との衝突で多数の死者が出ている状況についても意見を交わしたことを推測させるバチカンの声明文だ。

また教皇と大統領は、イラクに住むキリスト教徒への「社会的な絆を再構築するための貢献」と、「彼らの安全と未来に対する保障」についても意見を交換。中東地域での「さまざまな紛争と重大な人道危機」について、「国際社会の支援によって、信頼と平和共存が再構築されていく」ことを願った。

一方、イラク大統領府の声明文は、教皇とサレハ大統領の面会中に「教皇がイラクを訪問する可能性」について話し合われたと伝えている。教皇は昨年6月、「来年(2020年)中にイラクを訪問したいとの思いに、たびたび駆られている」と発言していた。

さらに、同大統領は教皇に対し、「ムスリム(イスラーム教徒)、キリスト教徒、諸宗教の信徒などのグループ間における友愛と平和共存が、あらゆる過激主義を排除していくための唯一の道」であり、「イラク国民を攻撃したあらゆるテロは、イスラームが説く寛容の教えに沿わない」と強調。「全てのイラク国民の間に一致と調和を奨励し、イラクの安定を支援し続ける」教皇に謝意を表した。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)