「パグウォッシュ会議と『非戦』の思想」 中東・イスラーム研究の板垣東大名誉教授が講演

講演に立った板垣東京大学名誉教授

科学者や市民らが平和の実現に向けた取り組みを考える連続講座「パグウォッシュ会議と『非戦』の思想」が1月26日、東京・港区の明治学院大学で行われた。日本パグウォッシュ会議、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会、明治学院大学国際平和研究所(PRIME)の共催。宗教者や市民ら約40人が参加した。

同連続講座は、世界の科学者らが、核戦争がもたらす悲劇的な結末を憂慮し、核兵器廃絶を訴えた「ラッセル・アインシュタイン宣言」(1955年)を基に、「核のない世界」の実現に向けて討議するもの。一昨年6月から実施されている。今回のテーマは、『「非戦」思想の人類史的展望』。

当日は、共催団体を代表してWCRP/RfP日本委から核兵器禁止条約批准タスクフォースの神谷昌道氏があいさつ。昨年は核廃絶の機運が後退し、新たな軍拡競争が始まった年と言われたが、その中でローマ教皇フランシスコが被爆地である広島、長崎を訪問した意義は大きいと述べ、「平和憲法を頂く私たちが具体的に何をするべきかを考える機会にしたい」と講座に期待を寄せた。

続いて、中東・イスラーム研究者である板垣雄三東京大学名誉教授が講演に立った。板垣氏は、多くの宗教は性善説の立場であり、戦争や武力衝突に直面している為政者も、心中では『非戦』の願いを持っているはずとの認識を示し、「その思いを掘り起こしていかなければならない」と語った。その上で、内村鑑三の非戦論やカントが唱えた国家の自由な連合による国際協調など、哲学者や思想家、宗教者の平和観を紹介した。

神谷氏があいさつに立った

さらに近年は、国家間の争いにとどまらず、武装勢力や過激派によるテロ行為も多発するなど、対立の構図が複雑化していると指摘。「人類史の新たな時代に突入している」と語った。

続いて、コメントを述べたPRIMEの高原孝生所長は、核抑止論に基づく安全保障に疑問を呈した上で、「ラッセル・アインシュタイン宣言」を基底として、軍拡競争から脱却する重要性を訴えた。

この後、質疑応答が行われた。