イラクが戦場となることを恐れる――バグダッド大司教(海外通信・バチカン支局)

ローマ教皇フランシスコは5日、バチカン広場での正午の祈りの席上、「世界の多くの地域で恐るべき緊張の雰囲気が漂っている」と指摘し、「戦争がもたらすのは、死と破壊のみだ」とアピール。「全ての関係者が(心のうちに)対話と自己抑制の灯火(ともしび)を保ち、敵対の影を追い払っていくように」と語り、参集した信徒たちに「神が、この恵みを与えてくださるよう沈黙の内に祈ろう」と呼び掛けた。

世界教会協議会(WCC)は3日、「ソレイマニ司令官は、多くの地域で軍事的暴力を促進していたため、無実の戦争犠牲者ではないが、彼の殺害と、それによる反応が、中東の広範囲に影響を及ぼし、より破壊的な紛争の脅威にさらす」と警告。関係者たちに「最大の抑制」を訴える声明文を公表した。

中東の正教会、プロテスタント、カトリック教会で構成される中東教会協議会(MECC)も同日、「中東とアラブ世界が危機に陥ることが明確になった」とし、「あらゆる形での暴力を拒否し、正義と愛のために闘いながら、紛争解決に向けた建設的な対話を願い、平和のために祈ろう」と訴えた。

トランプ米大統領は8日、ホワイトハウスで宣言文を読み上げ、イラン国民が各国と協調して共に繁栄するよう期待すると述べ、「米国は平和を求める全ての国と平和を受け入れる用意がある」と主張した。翌9日、米国カトリック司教協議会(USCCB)は、トランプ大統領のスピーチを「歓迎する」声明文を公表。全ての関係者に対して、「この危機的状況に際し、暴力ではなく平和を抱擁するように」と呼び掛け、「戦争は多くの生命を奪い、筆舌に尽くし難い苦しみと中東情勢の不安定を生むのみ」と訴えている。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)