「世界宗教者平和のための祈りの集い 平和に国境はない」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

続いて、テルアビブ(イスラエル)のラビ長(ユダヤ教)であるイスラエル・メイル・ラウ師、ロシア正教モスクワ総主教区外務部長のヒラリオン大主教、イスラーム・スンニ派最高権威機関「アズハル」(エジプト・カイロ)のモハメド・フセイン・マフラサウィ学長が宗教指導者としての「平和の証(あかし)」を表し、開会式は閉会した。

この後、参加者はマドリード市民たちと共に、市内の各地で2日間にわたって行われた『軍縮と非暴力』『子供たちは平和を望む』『現代の移民問題――現状と提案』『民族虐殺の予防』『女性と平和』『エコロジーと共通の宿命』『礼拝所の擁護』など27の分科会に臨み、世界平和に関する諸問題を分析し、解決策を探った。この中で相ノ谷室長は、『アジアにおける宗教』をテーマにした分科会で『経済成長とヒューマニズム』と題して発表した。

相ノ谷室長は、アジア各国が利益のみを追求して経済成長を進めてきた結果、格差の拡大や気候変動など諸問題を引き起こしてきたと詳述した。その上で、「人間行動は利己心だけでなく共感の作用を受ける。他者の幸運に興味を抱き、他者の幸福を自らも悦(よろこ)ぶ」という英国の哲学者アダム・スミスの言葉を引用しながら、大乗仏教が説く「私たちは互いに支え合う存在であり、一つのいのちを生きているのだから、他者に対して慈悲心を持つことが望ましい」との考えを紹介。共感や支え合いの精神を持って経済活動を進める必要性を強調した。

最終日、参加者は市内の各所で宗教別に平和の祈りを捧げた後、閉会式の会場であるアルムデナ大聖堂まで平和行進。閉会式では、諸宗教の代表者たちが署名した宣言文が読み上げられた。宣言文では、「唯一のものであり、全ての人々のものである地球を、少数の人間があたかも自分のものであるかのように浪費」「歴史において大きな破壊をもたらした、武力の崇拝や国粋主義の対立が再現」「テロによる無防備の人々への攻撃」といった「次世代にとっての憂慮」が深刻化し、「平和への夢が弱体化」していると強調。こうした地球規模の問題は、自国を守るために壁を築き、国境を閉鎖するといった一国単独の方法では解決はできない」と警告した。

最後に、参加した諸宗教の指導者たちは、壇上で平和のあいさつを交わし、平和の燭台(しょくだい)に火をともした。席上、来年の集いがイタリアのローマで開催されることが公表された。