性的少数者への理解を 職員人権啓発講座で性同一性障がいの虎井まさ衛氏が講演 

性的少数者について説明した後、虎井氏は自身の体験に触れ、2歳半で性別に違和感を覚えて以降、日常生活で感じた生きづらさを披歴した。特に、第二次性徴を迎える思春期には、学校での性別による集団行動を挙げ、「拷問のような毎日だった」と述懐。更衣室、トイレ、水泳の授業、修学旅行の部屋割りや入浴といった場面で精神的な苦痛が大きかったと語った。

講演では、1989年から米国で3回にわたる性別適合手術を受けたことも紹介。最初の手術を終えて麻酔から覚めた時は、「仮想現実を生きていた自分が、人生を開く鍵を手にした感覚があった」と、ようやく自らの心身を受け入れることができた喜びを、そう表現した。一方、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が施行される2004年まで、戸籍の性別変更が認められず、保険証には元の性別が記されたままだったため、そのことが受け入れられず、同時に提示した際の偏見や社会的不利益も恐れて通院を諦めたことがあると詳述。性的少数者に対する市民の理解とともに、法律の整備や行政の対応の必要性を指摘した。

虎井氏は最後に、自らは性的少数者ではないが、当事者を理解し、彼らを支えて歩もうとする「Ally(アライ)」と呼ばれる人々が増えてきたことに言及。いくつかの企業では、性的少数者への理解やその権利を尊重するバッジを社員が身につけるなど、連帯の動きが広がりを見せているとし、「ここにいる一人でも多くの人に、『私はAllyです』と言って頂けるようになることを願います」と語り、理解が広がることに期待を寄せた。